2018-04

オープンKIITO ’18 レポート

今回こそは!と思いつつ気づけば遅レポに…
こんにちは、松江です。

ホットなうちに書き上げてしまいたかったオープンKIITO’18のレポートですが、なんだかんだで3週間が経過…
イベント帰りの新幹線で途中まで書き上げたその量まさかの二行…頭の中で保存されていた文量の何十分の一だよこりゃ…
絶望をガソリンにここからは一気に行きます。



3月24日、神戸市の施設【KIITO】にてフリーペーパーのイベントを行わせていただきました。
オープンKIITOという一年に一度のイベントに毎年呼んでいただいておりまして、今年で5年目の開催になりました。
毎回の出展にて、私松江がフリーペーパー専門店・店主として『今、読んで欲しい50誌』というテーマで集めさせていただいたフリーペーパー・フリーマガジンを配布・展示するという企画をやらせていただいております。
2015年、2016年、2017年、とプラスαのトークイベントや特別展をやらせていただきましたが、今回は上記企画展のみになりました。が、単体でも十分なコンテンツと(結果的に)過去最高の来場者数でした。

以下、2018年度のイベントにご協力いただいたフリーペーパー・フリーマガジンです。
大学喫煙所名鑑
ヘルスグラフィックマガジン
WE/
ORB
himagine
月刊妄想星占い
TOKYO VOICE
別府地獄極楽新聞
畑々
CEL
宣伝広告
わに
手紙暮らし
SとN
hinagata magazine
鶴と亀
ナイスガイ
縄文ZINE
職・漁師
RAINBOW MAGAZINE
他人
夕焼けアパート
GO Journal
RAW
ふくしままっぷ
原波布読物紙
灯台どうだい?
茨女
odai magazine
mammoth
十六夜風車
雲のうえ
田んぼと油田
peeps
季刊にゃー
サブカミチャー
鉄聞
座・高円寺
詩ぃちゃん
UNDIES ZINE
Tech Tech
南部再生
いこい(not free)
マヌペーパー
BACKPACKER
飛騨
BOOKMARK
しくみまんがシリーズ
長岡『日本酒』『錦鯉』
とんじこんじ
(順不同)

















5年もやらせていただいておりますと流石にお客さんの反応や会場の空気の変化など感じることがありまして、その辺りについて少し触れておこうかと思います。

一昨年に関しましては、現地でレポート動画のようなものを撮らせていただいた関係で、ある程度の数のお客さんに直接感想を伺う機会があったのですが、あまり積極的に話しかけるのも邪魔になってしまうかと思い今回は基本的に直接お話を伺うことはありませんでした。(その代わりに、全50誌の解説フリーペーパーを配布しました)
従って、お客さんの生の声を一つ一つ拾ったという訳ではないということはご承知いただきたいのですが、個々のお客さんが《フリーペーパーが何だか面白いようだ》ということを知った上で来てくださっているという印象を今回の出展では強く受けました。
1回目や2回目の開催では、何だかよくわからないけどフリーペーパーってこんなに色々あるんだね〜、へ〜すごいね〜という反応が大半だったような気がします。そして、オープンKIITOというイベントに於いてONLY FREE PAPERの出展は、《何となくたどり着いたイベント》という位置付けでした。それは決してネガティブなことではなく、偶然の出会いや発見を大事にして欲しいという意味で、呼んでいただいたKIITOさんにはとても感謝しています。もちろんそれは今回も変わりませんが。
それが、昨年辺りから明らかに目の色が変わったと言いますか、目当てにお越しいただいている方の比率がグンと上がりました。(これは受付で案内をされている方から伺った話なので印象ではなく実際の話です)



ここには色々考えることがあるなーと思っておりまして、
まずは、続けることの重要性。
どんなことでもただ続ければ良いというある種の楽観的見解を提言しているのではなくて、ある程度時間がかかることもあるという事。何事もスピードが求められるご時世においてそのタイム感とは別次元でのみ浸透し、理解を得られることがあるという事。特に新しいチャレンジや分野においては。ここでの話の要点とは若干ズレますが、各フリーペーパーを発信する事ももちろんそうです。今回出展していただいた『himagine』というフリーペーパーなどはまさにそれです。
当時の法政大学の仲間で始めたフリーペーパーは、すごくざっくりと説明しますと同人誌のようなもので、一部のフリーペーパー好き以外には中々刺さりにくいだろうなーという代物でした。また、(こう言っては失礼かもしれませんが)目立った創作をする方で多い《天才型》というタイプでもありませんでした。しかし、大学を卒業した時点で発行が終わるあるいは創作そのものを止めてしまう方が大半の中、その後も細々と発行を続け現在18号まで発行されています。そしてどういうわけか15号辺りから明らかに読み物としての質がグンと上がったのです。この辺りの原因はよく分かりませんが、いやが応にもあの有名な『ウサギとカメ』という話を思い出してしまいました。実際僕の周りやSNSでの反応を見ても(良くも悪くも)話題に上がる回数がめちゃくちゃ増えました。どこかの時点で諦める事も同じくらい大事なのかもしれませんが、《諦めたくない》と思っていたり、《自分の中でなんか違う》と思っていないうちは、個人的には何事も続けて欲しいと思います。
そして、フリーペーパーという言葉に喚起されるイメージの幅が格段に広がった事。
今やフリーペーパー=クーポン誌・求人誌ではなくなっている事。もっと詳細に言うとすれば、フリーペーパーが自由で面白かった時代の復権。ただ戻って来ただけではなく、現代に呼応する最新のヴァージョンアップも抜かりなく。そんな事が言えるのかもしれません。昨今、ラジオやTVといったメディアからも熱い視線を受けるフリーペーパーも少なくなく、『縄文ZINE』『鶴と亀』『灯台どうだい?』といった人気フリーペーパーは書籍化されるに至りました。地域を盛り上げる手段として力のこもったフリーペーパーを活用していく事例も多くなりました。今や一部のカルチャー好きの嗜好品や広告戦略のツールだけに留まらず、制作側も読者側も多岐に渡っています。
さらには、フリーペーパーというメディアが持っている不可測的なパワー。
「フリーペーパーの魅力とは何ですか?」フリーペーパー屋として何十回(もっとかも?)と聞かれてきた質問であり、僕が知る限りのことはその都度お伝えしてきましたが、結局《よくわからないけどワクワクするものがここにある》という事に尽きるんですよね。そういうものを探求し言語化していくのが僕のような人間の役目だという事もわかっていますし、それはトライし続けていく所存ですが、正直「何でも言葉で欲しがりすぎじゃね?」って思う部分も多々あるんですよね。インターネットが人と人との物理的距離を一気に縮め、あらゆるハードルを越えて交流できるような世界を構築しました。そしてその中で取り交わされる通貨が文字である以上、何でも言語化したがるのは理解できますが、ヒトとヒト・ヒトとモノ・ヒトとコトがフィジカルでぶつかり合って生まれるものってインターネットのどこを検索しても見つからないんですよね。もちろんこれは無料の本に限らず、有料の本にも言えることではありますが、この文脈で言えばフリーペーパーの方がより《インターネット的》ではあると思います。知らない事や価値観を知っていく過程を楽しむ余白は常に持っていたいし、そのストーリーが時には結果よりも大事になる事もあります。説明が出来ないけど好きっていう事は、説明出来ちゃう好きよりもずっとあなたの心に残っているって事心あたりありませんか?
『ナイスガイ』という、かもめブックス【神楽坂】の柳下さんをもってして「宇宙一いらないもの」と言わしめたフリーペーパーは、多くの人から愛されています。(もちろん柳下さんからも愛されています)
『ナイスガイ』のことは、説明するほど野暮ったくなってしまうので、是非とも総集版の『超ナイスガイ』をご購入ください。当店でも販売しておりますし、ここからでもご購入いただけます。
注)購入は自己責任になります。購入後のクレームは当店では受け兼ねますので、直接ナイスガイ編集部までお願いいたします。

販売も行われた書籍化したフリーペーパーたち


イベントのレポートとはあまり関係なくなってしまいそうなので、ここらでイベントの話に戻ります。

神戸でイベントをやるという事で、毎回関西方面のフリーペーパー発行者さんが来てくださるのですが、その事は僕がこのイベントをやる上で楽しみにしていることの一つでもあります。
今回選ばせていただいた中では、イベントの少し前にお問い合わせさせていただいて送っていただいた『詩ぃちゃん』の発行者さんが「たまたま近くに来ている」という事で遊びに来てくださったり、『WE/』のご担当者さんが挨拶にいらしてくださったり、という事がありました。大勢の前に出る事に対してはさほど緊張しない僕ですが、好きなフリーペーパーを作っている発行者さんと会うとめちゃくちゃ緊張してしまうので、今回もめちゃくちゃ緊張しましたし、そのせいで緊張させてしまったかもしれませんがお会いできて嬉しかったです。

『詩ぃちゃん』の著者、大阿久佳乃さん。彼女はまだ高校生。


『詩ぃちゃん』もそうでしたが、在庫があまりないというフリーペーパーも多々あり『わに』『BOOKMARK』『手紙暮らし』『十六夜風車』『南部再生』といった辺りの冊子は早い段階でサンプルのみとなりました。
ONLY FREE PAPERの通常営業の中でも問い合わせが多い『手紙暮らし』は神戸でも大人気で、「これを見に来た」という方もいらっしゃいました。(そんな大人気の『手紙暮らし』は以前当店でインタビューさせていただいたので気になった方はこちらをチェック!!)

配布分はなくなり、サンプルもお持ち帰りされるフリーペーパーたち


また、会場で書いていただいたアンケートでは『peeps』『他人』『月刊妄想星占い』『CEL』『大学喫煙所名鑑』『しくみまんがシリーズ』『TOKYO VOICE』『飛騨』『ヘルスグラフィックマガジン』などの名前が多くあがっていました。
そして、アンケートの中にはこんな感想もいただきました。
「他のお客さんと交流できる空間づくりになっていなかったのが残念でした」
ひぇ〜〜!そうか〜むしろお客さん同士も交流したいのか〜!!そうですよね、むちゃくちゃ参考になりました。次回以降絶対に反映させますし、今夏予定でオープンする新しい場(ちゃんと整ったら正式にリリースします)にも参考にさせていただきます!!!

そんなこんながあり、11時のオープンから18時まで会場から人がいなくなる事がないほど本当にたくさんの方にお越しいただきました。カバンや手持ちの限界値までフリーペーパーを詰め込み、抱きかかえているお客さんの姿が目立ち、終わってみれば多くの冊子が少量を残すのみになりました。まだ在庫のあるフリーペーパーに関しましては、引き続きKIITOのフリーペーパーライブラリにて配布しておりますので、お近くにいらっしゃった方は是非お立ち寄りいただければと思います。

来年以降もKIITOさんではこのイベントを続けて行きたいですし、全国的にもこういったイベントはやって行きたいのでどんどんお声かけください!
そして、「無料ならそれはお客さん来るよね?」とフリーペーパーに関して懐疑的な目を向けられている方がもしいたならば、フリーペーパーの魅力が《そこもあるけど、そこじゃない》という事がわかっていただけると同時にもれなく「フリーペーパー面白いなぁ」という禁断の扉が開かれますので、次回の開催では是非お足を運んでいただけますと嬉しいです。
よろしくお願いします!

最後になりましたが、今回ご協力いただきましたフリーペーパーの発行者の皆様、本当にありがとうございました!!!


2018-04-17 | Posted in 松江健介, PEOPLENo Comments » 

 

インタビュー #11 「と、」



洗練されたデザインにおしゃれなモデルさん、だけどどこか温かみのある表紙。ところで、四隅の「藤井大丸」ってなんだろう。

実はこの『と、』、京都の地場百貨店・藤井大丸が発行しているフリーペーパーなんです。
なぜ百貨店がカルチャー誌のようなフリーペーパーを?と疑問に思った人は私だけではないはず。

そもそも、コンテンツを配信するだけならWebだけでいいんじゃないの?なぜわざわざコストのかかる紙メディアを選ぶのか?百貨店以外のお店も色々掲載していますけど、本当に百貨店のフリーペーパーなんですか?

あふれ出る疑問。
謎が多すぎる百貨店フリーペーパーの正体を探るため、フリーペーパーが好きすぎて自分で作るだけでなくフリーペーパーの店にまで潜り込んでしまった私檜山が、株式会社藤井大丸 販売促進課課長 山田知絵さんへとお話を伺ってきました。

『と。』

京都の地場百貨店「藤井大丸」が発行しているタブロイド誌。若者からファミリー向けに、京都の空気感に合わせたハイセンスなライフスタイルを提案する。「BEAMS」や「STUDIOUS」など、百貨店ではちょっと珍しいショップ展開をする「藤井大丸」の個性的な空気感を誌面にうまく落とし込んでいる。カタログ誌的なタブロイドではなく、スタッフを主役にしてアイテムや店舗を紹介していく構成が特徴的。2015年春から年2回、半年ごとに発行されている。




●紙もいい、と思う理由は、現場で人と接する商売だから

山田:いきなりなんですけど、インタビューになぜ当社を選んでいただいたんですか?

檜山:百貨店がなぜ紙の読み物を発行しているのか、すごく疑問に思ったからです。どこの会社も今から自社メディアを作るとなると、WebやTwitterを選択肢にあげる会社が多いと思うんです。なのに、インターネット全盛のこの時代になぜ紙メディアで発信されているのかなと興味を持って。

山田:お!お目が高い!

檜山:大学広報誌とかならまだしも、手間のかかる割に直接的な反応が分かりにくいフリーペーパーをなぜビジネスのフィールドでわざわざ作っているのかなって。そう気になったのが最初に興味を持ったきっかけでしたね。
山田:まさにおっしゃる通りで、今の時代、情報を発信するチャネルってたくさんあるじゃないですか。SNSやWebニュースなど、無料で簡単に情報を流せますよね。それが主流の中で、あえての紙です。「あ、紙なんや」って思ってもらうのが一つなんで、そこ気づいてもらえたのは嬉しいですね。

檜山:私はその思惑にまんまとはまったわけですね。

山田:(笑)。もちろんプラットフォームとしてWebに各店舗の情報は載っているんです。そこからオンラインショップにつなげたりとか、そういうのはもちろんWebのフィールドでやっています。でも私はこの紙に特別な価値を感じているんです。
百貨店はお客様ありきの商売なので、お客様が当店に対して親近感を持って貰えれば嬉しいですよね。ご来店いただいた時に『と、』を持って帰ってもらって、暇な時に見てもらって。それでスタッフや藤井大丸に愛着を持って貰いたい…というのが、この『と、』を作っている狙いです。長期でのブランディングに繋がればなと。

檜山:あ~、やっぱり紙って長期的ですよね。

山田:そうですね。時間はかかると思っていますが、やっぱり紙もいいな、面白いなと思うんです。ネットは確かにすぐ文章を作れてすぐ拡散できますけど、消費のスピードも速いので。良くも悪くも瞬発的といいますか。

檜山:そこはちゃんと意図されていたんですね。

山田:そうなんですよ。なのでWEB化の話もありつつの、ひとまず紙でという形で。フリーペーパーって反響が分かりにくいメディアだと思うんですけど、前の号ありますか?とか、次いつ出ますか?というお問合せもちらほらいただくので、じわじわ定着はしているかなっていう印象です。

檜山:そうなんですね。最初にこのフリーペーパーを出そうと提案したのは山田さんだったんですか?

山田:はい。

檜山:ほんとですか?てっきり上の人に言われてやっているのかなと。

山田:違うんですよ。以前からこういうのがあったらいいなと思っていて。私は販売促進課という部署でこのようなチラシやポスターなどを作る立場にいるんですけど、以前は営業部でフロア単位でショップのマネジメントをしていたんです。
私が直接販売をするわけではないですが、ずっと現場にいたんです。3年前に今の部署に来て、タブロイドを作りたいという思いを形にさせてもらったという流れです。

檜山:もともとフリーペーパーには興味があったんですか?

山田:ありましたありました。色んなところに出向いて集めていましたね。

檜山:フリーペーパーと聞いて一般の人がイメージするのって、クーポン誌とかああいう類のものだと思うんです。そっちじゃなくて、ONLY FREE PAPERで置いているような文化的な側面が強いフリーペーパーの存在をご存知だったんですね。

山田:はい。今でいうZINEみたいなものですね。たぶん今私が学生だったらZINE作ってたやろな。自分で写真を貼りつけてカラーコピーして…そうやってチラシや写真集を作るのが昔から好きだったんです。
京都ってそういうのが好きな方が多いと思うんです。京都は芸術・美術系の大学や専門学校が多いので。まあ、東京も多いと思うんですけど、京都は密度が高いというか。なのでアートやカルチャーに敏感な方が多いと感じますね。

●京都における藤井大丸のキャラクター

山田:藤井大丸というのは、実は百貨店の「大丸」とは全然関係のない会社で、株式会社藤井大丸という会社なんです。京都で1店舗しかない地場の百貨店なんですよ。

檜山:すいません、そこまでは知りませんでした。てっきり大丸のグループ店なのかなと。

山田:京都の人だと大丸と藤井大丸が違うということを知ってくださっていると思うんですけど、外から来た人は関係あるんじゃないかと思う人は多いですね。大丸京都店さんも同じ通りにあるんですよ。髙島屋さんも大丸さんの反対方向にあって、「四条通り」というメインストリートにお店があります。
その中でうちは一番敷地面積も少ないし、入っているブランドも特殊と言いますか、大手百貨店さんとは違ったラインナップでやっている百貨店なんです。

檜山:創業150年近い老舗と伺いましたが、百貨店の形態でちょっと都会的なブランドやセレクトショップを入れるっていうのは、全国的にも藤井大丸さんが先駆け的な存在だったんですか?

山田:当時、差別化を図ることに注力してファッションビルのような新しさとトレンド感、百貨店のホスピタリティと安心感をMIXした形態は、当時は珍しかったと聞いています。

檜山:京都でアート的な文化が多いっていうとなんかうまくマッチするのかもしれませんね。

山田:そうですね。京都はファッション感度の高い方や、新しいものが好きな方が多いので。京都在住のライフスタイルにこだわりのあるファミリーや、オシャレな学生さんには昔から支持していただいています。

檜山:京都の土地柄に合った経営戦略なんですかね。同じ通りに百貨店がいくつも並んでいるとおっしゃっていましたが、大丸や髙島屋と比べて、藤井大丸はどういう位置づけなんですか?

山田:大阪までは入ってきているけど京都にはまだ無いブランドや、関西にもまだ入ってきていない面白いお店をいち早く出店したり、イベントを通じてお客様に提案している。また、ファッションに特化しているところが特徴ですかね。

●自分のカラーを貫く藤井大丸。そのキャラをコンパクトに表現したフリーペーパー

山田:よく商品を俯瞰で撮って、説明を書いて値段はいくらで…といったカタログがありますよね。それはそれで商品情報を欲しい人には良いと思いますし、キレイで見やすくていいと思うんですけど、何となく”うちらしくない”と感じたんですよ。

檜山:分かります。カタログ的なものって、ある意味安っぽくもなりますよね。

山田:そうなんです。本当は気合入れてブックみたいなものを作りたい気持ちはあるんですけど、なかなかうち一社でやっているとコストも合わなくて。ファンでいてくださる方に気軽にお届けできるペーパーを作りたいなって思った時に、タブロイドみたいなのがいいと思って。で、なおかつ読み物ベースの。
興味がない人にとっては分かりにくいと思うんですけど、それもいいかなと思っていて。よく見たら面白い事書いてあるなとか、この出ている人全員店先にいるんや!みたいなことをたくさん載せていて。
だから商品情報は分かりにくいかもしれませんし、紙質もあえてこういうのなので、発色もあまり良くないかと。

檜山:ちょっとくすんで見えますよね。

山田:今の”うちらしさ”、空気感を表現してみたという感じですね。この雰囲気が多くの方に伝わればいいなっていう。

檜山:すごい。普通はそこで多くの会社は消費者優先のマーケティングに走っちゃうと思うんですけど。

山田:そうですね。それももちろんやらないといけないんですけど、これに関してはキャンペーン情報を載せたり、クーポンを付けたり、プロのモデルさんに出てもらうなどはあえてしないですね。

檜山:でも載っている人すごくかっこいいですよね?

山田:そうなんですよ!かっこいい人、かわいい人が働いていて、個性的な人もたくさんいるので、そういう人たちに出てもらわない手はないなと思って。

檜山:そのブランドだけではなく、そこで働いている人自身がコンテンツですよね。

檜山:どんな企業でもそうだと思うんですけど、そこにある商品をただ「これ良いですよ」って見せているだけだと届かないですよね。

山田:はい。良いものはもうあふれているじゃないですか。発信の仕方もありすぎて、それが誰にどう届くか分からないので、おもしろみを感じてくれる人にじわじわ届けるイメージですね。

檜山:本当に、人をうまくコンテンツに落とし込んでいてうまいなあって思います。

山田:ありがとうございます(笑)。

「藤井大丸」で働くスタッフを切り口に、お店やアイテムを紹介している


●リターンはあるのか

檜山:このタブロイドを作ってて何か反響は感じられますか?

山田:これおもしろいですねって、お客様からお電話いただいたことがあります。作った人に伝えてくださいっていうお電話をわざわざいただけたのは嬉しかったですね。その時の方は近所にお住いの主婦の方だったんですけど。特別ひいきのブランドがあるわけではなく、たまたま入った時にこれが1階にあったから持って帰ってくださったそうです。読み進めるうちに『と、』に出ている人が実際に働いている人って気づいて。
それまでは若いスタッフが働いているなっていう印象だけだったのが、親近感がもてて、いろんな人がいろんな形で働いているんやなって愛着を持ったと。それと同時に藤井大丸というものに改めて興味を持ってくださって。他にもそういう反響はいくつかありますね。

檜山:商売も何でもそうだと思うんですけど、結局人と人とのやり取りじゃないですか。でも大きい店とか企業になっちゃうと、その人と人の間に「お客さん」と「店員」という壁ができてしまうと思うんです。でもこの『と、』は、そのお客さんと店員さんを繋ぐ役割なんだなって、読んでて思いました。

山田:ありがとうございます。

檜山:『と、』は、これを読んで、この人に会いたい、と次に繋げられる出口があるから、そのお客さんもそう言ってくださったのかもしれませんね。

山田:そうですね。実際来てもらっていますんでね。で、このお店ってちゃんと入ったことなかったな、っていうきっかけになれば。最終的にはスタッフとの会話や商品のお買い上げにつながって、ファンになっていただきたいです!
あとは、インナーになりますが、スタッフに向けて作っている側面もありますね。販売員って華やかに見えますが、意外と地味な仕事もしていて。裏で検品したり、段ボールかたしたり、接客以外にも色々しています。朝から晩まで立ち仕事で大変そうと思われているかもしれません。
そこでスタッフをモデルのように起用して、モデル使いだけではなくその人のパーソナルな部分にまで迫るようなお話だったり、その人のプロフィールだったりを載せたり。彼らをフィーチャーすることでモチベーションUPに繋がればなって思っています。また、読んだ方に素敵な仕事だと知ってもらいたいです。

檜山:これはモチベーション上がりますよ!

山田:そうだと嬉しいです。出てくださいと依頼をするときに「嫌です」って言われたことほとんどなくて。皆照れながらも出てくれるんです。ちょっと変わったリクエストも全部受けてくれるんで(笑)。出演するスタッフの選定基準としては、コンテンツが決まった段階で、単純に出てもらいたいと思う人に声をかけています。

檜山:それは山田さん自身が現場で色んなスタッフさんを見ていた経験を活かして?

山田:そうです。いつも売場巡回しながら、あのスタッフさんオシャレやな、美人さんだなとか(笑)。私だけではなく、フロアを担当している社員にも意見を貰って、あの人面白いよと。そういう情報をコンテンツに当て込んでいくんです。

檜山:なんか…マネージャーの鑑ですよね。そういうことをした山田さんにこそできるフリーペーパーというか。

山田:自分で言うのも何なんですけど、それはあると思います。売場を担当していなかったらスタッフさんを出すという発想は無かったかもしれません。この人たちを出したら面白いのにっていうのは根底にあったし。売場でスタッフと接していた期間が長かったからこそのフリーペーパーかもしれないです。

檜山:うちのお店にいらっしゃるお客さんも、結構「会社でフリーペーパーをつくることになったからどういう企画がいいんだろう」って来る人が多いんですよ。そういう人たちに伝えたいことってありますか?

山田:なんやろう…。私これに出ている人やものをほぼ全部把握しているんですよ。見たことないスタッフさんや、見たことない商品は無いんです。全部ちゃんと知っているから、リアリティがあるんですね。なので、なんですかね。愛着があるかどうかじゃないですかね。その人、コンテンツに。

檜山:自分自身でもフリーペーパーを作ってて思うんですけど、大体皆、どこで誰が今注目されているらしい、だからうちでも取り上げたいみたいな。でもその誰かっていうのは今まで自分たちが関わったことが無い人。面識のない人に興味を持って取材に行く編集部は多いと思うので、その姿勢は見習いたいです。

山田:私自身が素人だから良かったのかもしれませんね。

檜山:でもこれを作ってらっしゃるのはデザイン会社さんですよね?

山田:そうです。デザイナーさん、カメラマンさん、ディレクターさんはプロの方にお願いしています。

檜山:編集方針を決めているのは山田さんですよね?

山田:テーマを決める、コンテンツを決める、出演者を決める、ページのレイアウト割とか入り口から細かい部分まで打ち合わせさせていただいています。もちろん取材や撮影も全て同行します。

檜山:そうなると、藤井大丸側の制作スタッフは山田さんが主に、ということですか?

山田:いろんなスタッフの手を借りながら私中心にやらせてもらっています。

檜山:そうなんですね。ちょっとデザインについても気になったんですけど、どんな風にデザイナーさんに伝えているんですか?この独特の雰囲気を。

山田:全体のデザインに関してはほとんどお任せしています。うちの空気感を分かってくれているデザイナーさんに作ってもらっているんですよ。

デザイン会社(左)との打ち合わせ風景


●社内メディアとしての役割

檜山:『と、』vol.5の「イメージカラー」のページあるじゃないですか。これはスタッフさん同士お互い紹介し合っていますが、お店違いますよね?

山田:はい。

檜山:これはもともと知っていた…まあ知っていたからこれ言えるんでしょうけど、どういう感じで交流があるんですか?

山田:そんなに大きい館ではないので、この人たち仲いいなとかはなんとなく見えてるんですよね。

檜山:じゃあ、もともとスタッフ同士の交流は他店舗間でもあるけど、これを発行したことでスタッフに良い影響だったりとかも結構狙っているんですか?

山田:そこまで行けばいいですね。まだ出ていないスタッフに、うちも出たいとか、うちのショップも紹介してほしいみたいな声をちらほら聴いているのでありがたいです。

檜山:外に向けての冊子というだけじゃなく、スタッフの交流ツールの一つとして、社内メディアの役割もあるんですかね。そこも考えてらっしゃったんですか?

山田:そうなれば理想的ですね。

スタッフ同士がお互いを紹介し合う特集


●身内ノリすぎるのはさぶいかなって

檜山:気になったんですけど、藤井大丸の館内の情報だけじゃなくて全然関係ないお店や人とかも載っていますよね?

山田:そうなんです。

檜山:それはなぜですか?

山田:スタッフ出すフリーペーパーで気をつけなきゃいけないなと思ったのが、「身内ノリすぎる」ことだと思ったんです。これ、「出ている人と作っている人しかおもんないやん」みたいなのはちょっとさぶいかなって思って。
そういう時に、新しいお店の情報や時々商品のこともちゃんと書くようにするというか、そこの塩梅は気を付けようと思っていて。見ようによってはすごく偏っているじゃないですか。『と、』で紹介したご飯屋さんやスポットを参考にしたり、実際めぐってくださっている方もけっこう多いようで、役立ててとても嬉しいです。

山田:「人と、モノと、藤井大丸と、」って表紙に書いてありますが、『と、』って何にでもつなげられるじゃないですか。藤井大丸とお客さん、藤井大丸とブランド、とか。京都らしい情報も時々盛り込んでいるので、藤井大丸と京都、とか。どこにでもひもづけられるように。



檜山:もはや藤井大丸というメディアですよね。藤井大丸というメディアを通して京都を知る。京都のブランドや物の価値を伝えていく感じ。学生さんも多いっておっしゃっていましたけど、学生さんが京都に来て最初に行く百貨店が藤井大丸さんだと思うんです。藤井大丸を入り口にしていろんな京都のお店を知るみたいな。そんなメディアみたいな百貨店だなって思いました。

山田:きれいにまとめてもらえましたね(笑)。

檜山:藤井大丸側は山田さんが主に動かれていると思うんですけど、上司の人とかに何か言われたりしないんですか?

山田:最初これを作りたいですって企画書を出した時に、これはどこから出た話ですか?と最初に聞かれました。要は企画会社が持ってきて単におもしろそうだからやりたいと言っているのか、自発的に必要性を感じてテーマ性を持ってやるのか、というヒアリングでした。圧倒的に後者だったので、「やらせてください!」と。それで「じゃあやってみましょう」ということに。

檜山:なるほど、最初の時点で編集方針を分かってくれているから。

山田:そう。じゃあ一回やってみなさいとお許しをいただきました。vol.1を出していろんな世代の方におもしろいねと意見をいただいて、vol.2も出そうということで今に至ります。最初が不評だったら続いていなかったかもしれないですね。

檜山:数字目標を達成しようとするのも大切ですが、それだけの会社やサービスはいずれ淘汰されていくと思います…。それに加えて独自の嗅覚で選んだコンテンツを発信しているから、長く続いているのかもしれませんね。

最新号(vol.6)の撮影風景


檜山:普段の業務の中でこれを作るのはすごく大変なんじゃないかなと思っていたんですけど。

山田:いやー、フリーペーパーって私気軽に見て読み捨てていたこともあったんですけど、仕上げるまでにけっこう時間かかりますね。けどその苦労以上に得るものが多いです。
どの会社も広報や販売促進の担当者って、愛社精神が強い人が多いと思うんですよ。宣伝をする上で、その商品やブランドに詳しくないといけない。『と、』を作ることで社内により詳しくなっていますし、今の部署の仕事に活かせるツールとして、個人的にもスキルアップに繋がっていると思ってます。良いことしかないですね!





調べてみるとマーケティングの世界では、
読者にとって価値あるコンテンツを配信することで企業と人との間に関係性を築き、購買や集客に導く「コンテンツマーケティング」というビジネス手法が年々増加してきているそうです。『と、』も、お客さんとお店との関係性を築くという点ではそれに近いメディアなのかなと感じました。
紙メディアでタブロイドを作る理由は、現場で人と接する商売だから。また、藤井大丸の特徴をそのままコンパクトにまとめ、コミュニケーションツールの役割も持つ『と、』。現場を見てきた山田さんを主として作るフリーペーパーだからこそ、藤井大丸のカラーを伝えられる。
藤井大丸一筋で働かれてきた山田さんの思いが込められた『と、』の話を聞いて、私も将来そんな仕事をしたいな、と感じました。




《Information》
2018年3月23日より、『と、』最新号が藤井大丸館内各所・ONLY FREE PAPERなどで配布しています。
今回のテーマは【なみ】。
軒並み、街並み、人生の波、トレンドの波、、、など、藤井大丸で働くスタッフを主役に様々なコンテンツでお届けしています。
藤井大丸とゆかりのある京都で活躍する人を紹介する「京都のひと」では、イラストレーターとんぼせんせいとDJ YOTTUが登場!
ぜひ、お手に取ってご覧ください。





interview・text 檜山(ONLY FREE PAPER)
photo 檜山(ONLY FREE PAPER)、一部山田さん提供


2018-04-10 | Posted in OFP STAFF, インタビューNo Comments » 

 

フリーマーケット ” オンフリマ 4 ” 開催!!

当店ONLY FREE PAPERが入居する東小金井駅高架下一帯のスペース『コミュニティステーション東小金井』最大のイベント「家族の文化祭(春)」が今年も4月22日(日)に開催されます!!



毎回、5,000人だか6,000人だかのたくさんの人が集まり、高架下が大いに賑わうこのイベントにて、当店は4回目となる「オンフリマ」と題したフリーマーケットを開きます。

第1回オンフリマ
第2回オンフリマ
第3回オンフリマ



オンフリマとは、フリーペーパーの発行者さんを中心に、興味深い活動をされている方々をお呼びして開かれるフリーマーケット。今回もそれぞれにエッジの効いた5組がヒガコプレイスに集まります!

HORIE BLDG(屋上とそら/NA/iwappen)
名古屋駅のウェッサイ、中村区椿町に新しく誕生するカルチャースポット「NA@HORIE BLDG」。主催はフリーペーパー『屋上とそら』の面々。ギャラリーや喫茶店が入居する他、名古屋発のアパレルブランド「iwappen」が展開する他、「ONLY FREE PAPER」の名古屋店が入居します。
本格オープンを前に先行してオンフリマにて腕試しのため上京です!
https://www.facebook.com/horiebldg/

SATURDAY MORNING(ナイスガイ)
フリーペーパー『ナイスガイ』編集長の橋本氏がナイスガイとは真逆の方向性でやっているアパレルブランド。「土曜日の朝に着たくなる服」がコンセプトの、かわいくて爽やか〜なデザインのTシャツやスウェット、パーカーなどを展開しています。
最近発行されたナイスガイの有料版『超ナイスガイ』も販売するかも。
https://satmorning.theshop.jp

茨女
茨城県出身の、県内外で活躍する女性を応援するフリーマガジン『茨女』。2015年3月に創刊してから今年で3周年を迎えました。年に2回(3月と9月)の発行に加え、本年は3月に別冊『つく女』も発刊!
当日は編集部メンバーが店頭で直接、魅力度ランキング最下位の茨城県の魅力をお伝えします!
茨城の限定グッズの配布や販売も!
http://www.ibajyo.com

欲望と妄想と哲学
昨年、「お金」と「愛」をテーマに欲望と妄想のままに創刊されたフリーペーパー『欲望と妄想』。そこから派生した新たな編集チームが、このたび本質を追い求めるスピンオフ版『欲望と妄想と哲学』を発行。欲望と妄想をかき立てる、料理人も加わった新たなチームでオンフリマにて【欲望と妄想と哲学酒場】をオープンします!
https://www.facebook.com/yokuboumousou/

SUNROOM
小田原で植物とコーヒーを媒介に、コミュニケーションや面白いことを生み出し続けるSUNROOM。お店には多肉植物をはじめ、小さなものから大きなものまで、個性あふれる植物や雑貨が、無秩序と必然性の中に息づいています。思わず足を止めずにはいられない「独自の美意識と文化の創造」。このたび創刊のフリーペーパーもお楽しみに!
http://memekun.wixsite.com/sunroom

(順不同)

以上5組!!

4月22日、ヒガコでお待ちしております!!!

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オンフリマ4
【日時】4月22日(日) 10:00-16:00
【会場】ONLY FREE PAPER ヒガコプレイス店(東京都小金井市梶野町5-10-58 コミュニティステーション東小金井)
-JR中央線「東小金井駅」北口より約徒歩3分-
【主催】ONLY FREE PAPER
【協力】株式会社リライト

当日は通常営業(フリーペーパーの配布)の規模がかなり縮小されます。ご了承ください。

家族の文化祭
【日時】4月22日(日) 10:00-16:00
【会場】コミュニティステーション東小金井
-JR中央線「東小金井駅」北口より約徒歩3分-
【主催】東日本旅客鉄道株式会社、株式会社中央ラインモール
【運営】家族の文化祭実行委員会
【後援】小金井市
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2018-04-09 | Posted in NEWSNo Comments »