PEOPLE

他人と屋上とそらと 〜インタビュー 特別編〜



フリーペーパー好きの方々なら『他人』というフリーペーパーの名前を聞いた事があるかもしれない。

おおよそ4年前、突如として配布された謎のフリーペーパーは、その内容から瞬く間に評判を呼び、界を賑わせた。
長きに渡る沈黙の後、もう終わってしまったと思われていた昨年、待望のvol.2が発行された。
その内容も正に圧巻で、vol.1を更に煮詰め凶暴にしたような強烈さだった。vol.1が大好きだった僕でさえ、一度に全てを読み終える事が出来なかった。半分ほどを読み終えた時点で、いつの間にか胸焼けのような眩暈のような、そんなどことない体の異変にすっかり支配されてしまった僕は、一度誌面から視線を外し一息置いてから何とか最後まで読み終える事が出来たのだった。

さて、そもそも『他人』を知らない方はここまで読んで、何がそんなに強烈なんだとお思いのことだろう。



そもそも『他人』とはどんな内容のフリーペーパーなのか。
ざっくりと説明してしまうと、《あかの他人に対し、アポなしの突撃インタビューを敢行するインタビュー誌》ということになるだろう。
このコンセプトだけでも十分に何やら只者ではないという印象を受けるが、それ《だけ》と言えば《だけ》なのだ。
シンプルで洗礼されたデザインを持ったタブロイド誌というアウトラインは、読者に気持ち良い読書体験を提供する手助けを担っているということは明白だが、基本的にコンテンツはインタビューのみだ。

それでは、何がそこまで強烈なのか?

ここからは、今回お話を伺った『他人』の発行人であるマジで株式会社代表取締役の西井さん(名刺が分厚かった方の人)とアシスタントデザイナーの加藤さん(名刺が薄かった方の人)のお話を交えて進めていきたいと思う。
なお、今回の取材は、マジで株式会社が拠点としている名古屋で行わせていただいたが、共に名古屋を拠点としているフリーペーパー『屋上とそら』の堀江さんと岩井さんを交えたオープンな雑談形式で行われた。










左より、他人編集部・加藤さん、屋上とそら編集部・岩井さん、他人編集部・西井さん、屋上とそら編集部・堀江さん


僕は、『他人』を人に紹介する際によく《短編小説やあるいは哲学書を読んでいるようだ》と形容させていただいている。
vol.1でインタビューを受けていたおばあちゃんのインタビューには、生きること(生きてきたこと)の重みや、物語性が多分に含まれていた。生々しく、荒々しく、そしてどこまでもある種のエンターテイメントだった。
この部分を西井さんにお尋ねしたところ、「完全にノンフィクションですね。尺を削りはしますが、編集はほとんどしていません」という。これには、僕も堀江さんも驚いた。そんな都合良く良物件が落ちているものなのかと。更にアウトテイク的なものは特になく、一発一中だそう。
「やはりガチ凸の取材は断られる事が多かったんですが、そんな中、向こうの方から『私を撮って〜』と手を振って走ってきた人がいたんですね。それがvol.1のおばあちゃんです」という。



vol.2のおじいちゃんに関しては、公園の大きな桜の樹の下で2ℓのペットボトルにフル充塡された酒をラッパ飲みしていたところを捕獲されたそう。その光景に圧倒された西井さんと加藤さんがこの人しかいないと取材交渉に移ったという。
桜の樹の下には屍体が埋まっている代わりに、ペットボトルごと凍らせた酒をラッパ飲みし更にはその未知の飲み物らしき物体を人に薦めてくるおじいちゃんが仁王立ちしている、これが中村公園だ。…名古屋市、大丈夫だろうか…。
「酒と一緒に持っていたモツ煮(のようなもの)を薦められて、せっかくということで食べてみたのですが、、、(汗)」と加藤さん。
「あ、これか(笑)」と堀江さんが見るvol.2の裏表紙のおじいちゃんの足元には、緑色の何かが沈殿しているように見えるもつ煮(のようなもの)が確かに鎮座していた。

足元には割り箸が刺さったままのもつ煮(のようなもの)


取材は毎回壮絶を極めるそう。
「軽くインドに行って帰ってきたような感覚になります…」そう仰る他人編集部のお二方の苦笑いは、
苦9:笑1の比率で構成されていた。そして、名古屋市内に広がるインドからの帰路、ドライブのお供はいつだって重厚な疲労感だそう。
しかし、彼らの足はまた聖地巡礼の旅へと向かう。
一体何が彼らをそこまで掻き立てるのだろうか。

ここで、一旦遡り、そもそも何故このようなフリーペーパーを発行するに至ったのかという部分を伺ってみた。
元々バンドマンだったという西井さんは、その頃から自身の考えや思いを何かしらの形で表現していくことが自身の一部であったのだろう。
(マジで株式会社では、出勤してから哲学や宇宙の話をしていたらお昼になっていたというお話も…)

バンド解散後のある時期に、その矛先はまちづくりに向かっていったそう。
「5年ほど前にSYNCHRONICITY NAGOYAというまちづくりをテーマにしたコミュニティを立ち上げて活動していました。そこでは“街づくりとは人づくりだ”というコンセプトで人の自己実現をベースにいくつかのプロジェクトが立ち上がっておりまして、その中の一つがフリーペーパー他人でした。ライターになりたい夢を持ったメンバーと共に、その夢を少しでも実現するために何か形にしたいと立ち上げたのがきっかけです。」
始まったプロジェクトはその後頓挫してしまったそうだが、『他人』のプロジェクトは捨てきれず、ご自身が立ち上げた会社で引き継いだそうだ。



インタビューというものは、取材対象の話で成り立つもので、記事の書き方によって必ずしもそうでない場合もあるにせよ、基本的には取材対象が主体になっている。しかし、『他人』というフリーペーパーを初めて手にし読んだ時に《取材している側》の強烈な主体を感じたのだ。
このフリーペーパーの本編は100%インタビューのテキストで構成されている。すなわち、今僕が書いているこの記事のような構成ではない。本来ならその形式では《取材している側》というのはとても中立的で居て、無色なはずなのだが。
しかし、お話を伺っていくうちに何故《取材している側》が顔を覗かせるのか、そのカラクリが見えてきた。
それは、成り立ちのエピソードでお話してくださった「自己表現をベースとしたプロジェクト」という部分がその一つであると考えられるし、更にはこんなお話もしてくださった。
「ここに収められている事の全ては取材班の僕ら目線で行われているものであることに間違いありません。
フリーペーパー他人にとってのあかの他人は私達編集者や読者様となります。そういったことを哲学することで、人間と人間の境界線みたいなものを考えるひとつのきっかけが、このフリーペーパーと出会った人たちの“無意識”を刺激してくれたらとても嬉しいです。」



ふと気がつくと西井さんの横に座る加藤さんの口数が少なくなっていることに気がつく。
「さっきもつ煮の話をしたら、あの時の記憶が蘇ってきて、、、」と加藤さん。顔色がすぐれない。いや、すぐれないというよりも例のもつ煮(のようなもの)の緑色に近づいてきている気もする。おじいちゃんの求心力が如何程だったにせよ、朝起きたらもつ煮になっていました、なんて話は流石のカフカでさえも笑ってくれないだろうから、ここはひとつ加藤さんの無事を願って先に進めるとしよう。
そんな加藤さん、このインタビューの当日、西井さんよりも一足早く現地に到着していたので先行して少しお話を伺っていたのだが、実はvol.1の製作には関わっていなかったという。であるならば、社長(西井さん)の到着を待ってから色々お話を伺おうと逸る気持ちを一旦しまい込んだが、この部分こそが、『他人』の発行間隔が酷く空いてしまったという部分のお話に関連していく。
前の晩にそわそわして眠れずYouTubeを見過ぎて遅れた社長(西井さん)のお話によると、vol.1を製作し、順調にvol.2のインタビューを取り終えたが、その後にコアメンバーが抜けてしまってそれから『他人』の製作は鳴りを潜めてしまったという。それを救ったのが何を隠そう、もつ煮になりかけている加藤さんだったそう。
「加藤くんがやるって言ってくれて、『他人』がまた動いた感じですね」という西井さんはなんだかとても嬉しそうだった。
ちなみに世に出ているvol.2は加藤さんと全く新しくインタビューしたもので言わばvol.3、本来のvol.2はデータがどっか行ってしまったというこぼれ話もしてくださった。
そしてここで、『他人』の読者には一つ朗報を持ち帰ったので共有しておきたい。オフィシャルリリースのvol.3が近日中に発行されるのだ。そして、そのインタビューは既に録り終えているそう。その情報を耳に入れたのは、このインタビュー終盤のことで、すっかり「彼らのビジョンの今後がもっと見たい!」と思わされてしまった後の事だったので、僕らは尚更それを喜んだ。
そして、それは今までとは少し違う“チャレンジング”な内容になると言う。もちろん基本的なコンセプトは従来通りなのだが。
「今度のやつは色々な意味で読者が試されると思います」と不敵な言葉を残した西井さんは少し誇らしげであった。それだけでも今回の仕事がとても満足のいくものだったのだろうと想像に容易い。

“仕事”??
これって仕事なの??
そもそもフリーペーパーでしょ?広告入ってないんでしょ?お金どうしてるの?

フリーペーパーについてあまり詳しくないけどここまで読んでいただいた方(本当にありがとうございます!)はそろそろこういう類の話を欲しているのではないかと思う。
フリーペーパーは、日本語に訳すと無料誌だが、自由誌とも取れる。形・装幀はもちろん、発行に至る動機や発行元、流通の仕方、内容、全てにおいて定型は無い。「広告で成り立っているメディア」という認識が多くの人の中に根付いているのだろうが、それは解であり解でない。《あくまでそういうものもある》というくらいがいいところだろう。何度も言うが自由誌であるので、一つの定型に収まるものではないのだ。
では、そういうことならば、『他人』とは一体なんなのか?

結論から言わせていただくと、『他人』は一つのアートプロジェクトだという事だ。西井さんが持ち続ける内(自己)と外(他者)を徹底的に考察し哲学していくこと、そしてその先にある内と外との邂逅、さらにそこから創造される新しい内および外、循環、輪廻。インスタントな世の中では、他人とのコミュニケーションはおろか、SNSに夢中で自己との対話もままならない。そういった現代に対する西井さんなりの一つの表現が『他人』だったのではないだろうか。そしてこの仮説によって炙り出されたものの中で特に注目したい点は、アナログメディアである《紙》で表現することの明確な必然性だろう。

「紙が好きだから」
なぜWEBではなく紙なのか?という質問に対する回答として多くのフリーペーパー発行者さんが答えてきたものがこれだ。そして、これ以上清々しく美しいものはおそらく存在しないだろう。最高のセンテンスだ。
しかし、掘り下げていくと、好きだという感情の裏に隠れがちなそれぞれの《紙でなければいけない理由》が存在しているものなのだ。逆に言ってしまうと、この《紙でなければいけない理由》が存在しない紙メディアは結果として非常に弱くなってしまうことが多い。

西井さんは『他人』が、《紙でなければいけない理由》をこう語ってくれた。
「携帯する事にも適さない、置き場所にも困る、さらに大きな誌面に文字がぎっしりで読みづらい、持っていて邪魔になる、という特性を詰め込んだタブロイドサイズにしているところに、特にその理由があります。
人の人生を垣間みる、人に共感する、人の気持ちに寄り添う、自分以外の人、特にあかの他人に接触してコミュニケーションをとるという行為そのものが、現代ではとてもエネルギーを使う行為だと思うんです。
面倒だから本当はそんなことしたくないって普通だったら思ってしまうし、だからこそ楽な方へ、楽なコミュニケーションへと流されてしまいがちになる。
でも、その面倒を打ち破るほどの他者への愛情を持ってそこへ飛び来んだときに、逆に自分が満たされる感覚になるんです。
その体験、その感覚を少しでもこのフリーペーパー『他人』には宿したいという理由で、
自分以外の人に寄り添う“面倒臭さ”を“思うようにならなさ”を表現するには、この紙という媒体が一番適しているんです。
だから、フリーペーペー『他人』がある意味“便利”になってしまうと本質からズレてしまうのです。」

『他人』と(わざわざ)面と向きあう事でしか生まれようのないモノやコトが存在し、それを様々な人に感じて欲しい。そんな思いを文字通り体を張って収穫してくる戦士こと他人編集部。
そんな戦士たちの戦いの記録は、度々《読書会》という形でイベントに昇華されているという。しかもそれは、彼らが主催しているわけではなく、読者の皆さんが自発的に催しているという。
《インタビューに対する読書会》なんていうものを今まで聞いた事がなかったので、これには本当に驚いた。と同時にあってしかるべきだと思ったし、参加したいとさえ思った。
新刊が発行された際は、是非開催したいものだ。



ここまで、『他人』を取り巻く環境やこれまでの歩みを、伺ったお話を元に綴ってみたが、肝心の内容にはほとんど触れていない。
その点に関して、ここで語るのはあまりにも野暮であるし、やはり手に取って読んでみて欲しいと思うからだ。そして、読んだあなた自身が何を感じるかがとても重要なポイントなのだ。おそらく誌面に登場するおじいちゃん・おばあちゃんは《たまたま》そこに載っているのであり、もっと抽象的な概念のようなものなのだ。『他人』を前にし、『他人』の話を聞き入った先に何かを見るのか、はたまた何も見ないのか、あなた自身がその経験を大事にして欲しいと思う。

※フリーペーパー『他人』は、ONLY FREE PAPERでvol.1(残り僅か)、vol.2共に配布中。近日発行予定のvol.3ももちろん配布予定ですので、是非お手に取って見てください。



—ロケ地について—
今回のロケは、この夏オープン予定のHORIE BLDGで行われました。
記事内にもご登場いただいた屋上とそら主宰の堀江さんが新しく作るオープンスペース。
1階には喫茶店『RIVER』と当店『ONLY FREE PAPER』の名古屋店が入居し、2階はギャラリーなどに使用できるオープンスペースになります。3階には堀江さんも所属するデザイン事務所『RADICAL』の事務所。
そして、全館に渡り『NA』という名古屋初のブランドを展開していきます。
ロケーションは、名古屋のウェッサイ、名古屋駅西口から約5分。
正式な発表は、日程が決まり次第行います。乞うご期待下さい。



《お詫び》
のんびりとこちらの記事を書いている間に待望のvol.3が発行されました。
他人編集部が口を揃えて語ってくれた事が半分わかるようで、半分はどこか肩透かしを食らったような不思議な読後感を味わいながらこの文章を仕上げています。これが彼らのいう「読者が試される」という事なのでしょうか。
とはいえ、『他人』が持つ一筋縄ではいかない重厚感はそのままに、と言いますか更に増しているような気がします。
そして、今までで一番の配布率です。(品切れにより追加発注中入荷しました

何はともあれ、記事のリリースが遅れてしまったこと、お詫び申し上げます。


text・interview・photo 松江(ONLY FREE PAPER)


 

オープンKIITO ’18 レポート

今回こそは!と思いつつ気づけば遅レポに…
こんにちは、松江です。

ホットなうちに書き上げてしまいたかったオープンKIITO’18のレポートですが、なんだかんだで3週間が経過…
イベント帰りの新幹線で途中まで書き上げたその量まさかの二行…頭の中で保存されていた文量の何十分の一だよこりゃ…
絶望をガソリンにここからは一気に行きます。



3月24日、神戸市の施設【KIITO】にてフリーペーパーのイベントを行わせていただきました。
オープンKIITOという一年に一度のイベントに毎年呼んでいただいておりまして、今年で5年目の開催になりました。
毎回の出展にて、私松江がフリーペーパー専門店・店主として『今、読んで欲しい50誌』というテーマで集めさせていただいたフリーペーパー・フリーマガジンを配布・展示するという企画をやらせていただいております。
2015年、2016年、2017年、とプラスαのトークイベントや特別展をやらせていただきましたが、今回は上記企画展のみになりました。が、単体でも十分なコンテンツと(結果的に)過去最高の来場者数でした。

以下、2018年度のイベントにご協力いただいたフリーペーパー・フリーマガジンです。
大学喫煙所名鑑
ヘルスグラフィックマガジン
WE/
ORB
himagine
月刊妄想星占い
TOKYO VOICE
別府地獄極楽新聞
畑々
CEL
宣伝広告
わに
手紙暮らし
SとN
hinagata magazine
鶴と亀
ナイスガイ
縄文ZINE
職・漁師
RAINBOW MAGAZINE
他人
夕焼けアパート
GO Journal
RAW
ふくしままっぷ
原波布読物紙
灯台どうだい?
茨女
odai magazine
mammoth
十六夜風車
雲のうえ
田んぼと油田
peeps
季刊にゃー
サブカミチャー
鉄聞
座・高円寺
詩ぃちゃん
UNDIES ZINE
Tech Tech
南部再生
いこい(not free)
マヌペーパー
BACKPACKER
飛騨
BOOKMARK
しくみまんがシリーズ
長岡『日本酒』『錦鯉』
とんじこんじ
(順不同)

















5年もやらせていただいておりますと流石にお客さんの反応や会場の空気の変化など感じることがありまして、その辺りについて少し触れておこうかと思います。

一昨年に関しましては、現地でレポート動画のようなものを撮らせていただいた関係で、ある程度の数のお客さんに直接感想を伺う機会があったのですが、あまり積極的に話しかけるのも邪魔になってしまうかと思い今回は基本的に直接お話を伺うことはありませんでした。(その代わりに、全50誌の解説フリーペーパーを配布しました)
従って、お客さんの生の声を一つ一つ拾ったという訳ではないということはご承知いただきたいのですが、個々のお客さんが《フリーペーパーが何だか面白いようだ》ということを知った上で来てくださっているという印象を今回の出展では強く受けました。
1回目や2回目の開催では、何だかよくわからないけどフリーペーパーってこんなに色々あるんだね〜、へ〜すごいね〜という反応が大半だったような気がします。そして、オープンKIITOというイベントに於いてONLY FREE PAPERの出展は、《何となくたどり着いたイベント》という位置付けでした。それは決してネガティブなことではなく、偶然の出会いや発見を大事にして欲しいという意味で、呼んでいただいたKIITOさんにはとても感謝しています。もちろんそれは今回も変わりませんが。
それが、昨年辺りから明らかに目の色が変わったと言いますか、目当てにお越しいただいている方の比率がグンと上がりました。(これは受付で案内をされている方から伺った話なので印象ではなく実際の話です)



ここには色々考えることがあるなーと思っておりまして、
まずは、続けることの重要性。
どんなことでもただ続ければ良いというある種の楽観的見解を提言しているのではなくて、ある程度時間がかかることもあるという事。何事もスピードが求められるご時世においてそのタイム感とは別次元でのみ浸透し、理解を得られることがあるという事。特に新しいチャレンジや分野においては。ここでの話の要点とは若干ズレますが、各フリーペーパーを発信する事ももちろんそうです。今回出展していただいた『himagine』というフリーペーパーなどはまさにそれです。
当時の法政大学の仲間で始めたフリーペーパーは、すごくざっくりと説明しますと同人誌のようなもので、一部のフリーペーパー好き以外には中々刺さりにくいだろうなーという代物でした。また、(こう言っては失礼かもしれませんが)目立った創作をする方で多い《天才型》というタイプでもありませんでした。しかし、大学を卒業した時点で発行が終わるあるいは創作そのものを止めてしまう方が大半の中、その後も細々と発行を続け現在18号まで発行されています。そしてどういうわけか15号辺りから明らかに読み物としての質がグンと上がったのです。この辺りの原因はよく分かりませんが、いやが応にもあの有名な『ウサギとカメ』という話を思い出してしまいました。実際僕の周りやSNSでの反応を見ても(良くも悪くも)話題に上がる回数がめちゃくちゃ増えました。どこかの時点で諦める事も同じくらい大事なのかもしれませんが、《諦めたくない》と思っていたり、《自分の中でなんか違う》と思っていないうちは、個人的には何事も続けて欲しいと思います。
そして、フリーペーパーという言葉に喚起されるイメージの幅が格段に広がった事。
今やフリーペーパー=クーポン誌・求人誌ではなくなっている事。もっと詳細に言うとすれば、フリーペーパーが自由で面白かった時代の復権。ただ戻って来ただけではなく、現代に呼応する最新のヴァージョンアップも抜かりなく。そんな事が言えるのかもしれません。昨今、ラジオやTVといったメディアからも熱い視線を受けるフリーペーパーも少なくなく、『縄文ZINE』『鶴と亀』『灯台どうだい?』といった人気フリーペーパーは書籍化されるに至りました。地域を盛り上げる手段として力のこもったフリーペーパーを活用していく事例も多くなりました。今や一部のカルチャー好きの嗜好品や広告戦略のツールだけに留まらず、制作側も読者側も多岐に渡っています。
さらには、フリーペーパーというメディアが持っている不可測的なパワー。
「フリーペーパーの魅力とは何ですか?」フリーペーパー屋として何十回(もっとかも?)と聞かれてきた質問であり、僕が知る限りのことはその都度お伝えしてきましたが、結局《よくわからないけどワクワクするものがここにある》という事に尽きるんですよね。そういうものを探求し言語化していくのが僕のような人間の役目だという事もわかっていますし、それはトライし続けていく所存ですが、正直「何でも言葉で欲しがりすぎじゃね?」って思う部分も多々あるんですよね。インターネットが人と人との物理的距離を一気に縮め、あらゆるハードルを越えて交流できるような世界を構築しました。そしてその中で取り交わされる通貨が文字である以上、何でも言語化したがるのは理解できますが、ヒトとヒト・ヒトとモノ・ヒトとコトがフィジカルでぶつかり合って生まれるものってインターネットのどこを検索しても見つからないんですよね。もちろんこれは無料の本に限らず、有料の本にも言えることではありますが、この文脈で言えばフリーペーパーの方がより《インターネット的》ではあると思います。知らない事や価値観を知っていく過程を楽しむ余白は常に持っていたいし、そのストーリーが時には結果よりも大事になる事もあります。説明が出来ないけど好きっていう事は、説明出来ちゃう好きよりもずっとあなたの心に残っているって事心あたりありませんか?
『ナイスガイ』という、かもめブックス【神楽坂】の柳下さんをもってして「宇宙一いらないもの」と言わしめたフリーペーパーは、多くの人から愛されています。(もちろん柳下さんからも愛されています)
『ナイスガイ』のことは、説明するほど野暮ったくなってしまうので、是非とも総集版の『超ナイスガイ』をご購入ください。当店でも販売しておりますし、ここからでもご購入いただけます。
注)購入は自己責任になります。購入後のクレームは当店では受け兼ねますので、直接ナイスガイ編集部までお願いいたします。

販売も行われた書籍化したフリーペーパーたち


イベントのレポートとはあまり関係なくなってしまいそうなので、ここらでイベントの話に戻ります。

神戸でイベントをやるという事で、毎回関西方面のフリーペーパー発行者さんが来てくださるのですが、その事は僕がこのイベントをやる上で楽しみにしていることの一つでもあります。
今回選ばせていただいた中では、イベントの少し前にお問い合わせさせていただいて送っていただいた『詩ぃちゃん』の発行者さんが「たまたま近くに来ている」という事で遊びに来てくださったり、『WE/』のご担当者さんが挨拶にいらしてくださったり、という事がありました。大勢の前に出る事に対してはさほど緊張しない僕ですが、好きなフリーペーパーを作っている発行者さんと会うとめちゃくちゃ緊張してしまうので、今回もめちゃくちゃ緊張しましたし、そのせいで緊張させてしまったかもしれませんがお会いできて嬉しかったです。

『詩ぃちゃん』の著者、大阿久佳乃さん。彼女はまだ高校生。


『詩ぃちゃん』もそうでしたが、在庫があまりないというフリーペーパーも多々あり『わに』『BOOKMARK』『手紙暮らし』『十六夜風車』『南部再生』といった辺りの冊子は早い段階でサンプルのみとなりました。
ONLY FREE PAPERの通常営業の中でも問い合わせが多い『手紙暮らし』は神戸でも大人気で、「これを見に来た」という方もいらっしゃいました。(そんな大人気の『手紙暮らし』は以前当店でインタビューさせていただいたので気になった方はこちらをチェック!!)

配布分はなくなり、サンプルもお持ち帰りされるフリーペーパーたち


また、会場で書いていただいたアンケートでは『peeps』『他人』『月刊妄想星占い』『CEL』『大学喫煙所名鑑』『しくみまんがシリーズ』『TOKYO VOICE』『飛騨』『ヘルスグラフィックマガジン』などの名前が多くあがっていました。
そして、アンケートの中にはこんな感想もいただきました。
「他のお客さんと交流できる空間づくりになっていなかったのが残念でした」
ひぇ〜〜!そうか〜むしろお客さん同士も交流したいのか〜!!そうですよね、むちゃくちゃ参考になりました。次回以降絶対に反映させますし、今夏予定でオープンする新しい場(ちゃんと整ったら正式にリリースします)にも参考にさせていただきます!!!

そんなこんながあり、11時のオープンから18時まで会場から人がいなくなる事がないほど本当にたくさんの方にお越しいただきました。カバンや手持ちの限界値までフリーペーパーを詰め込み、抱きかかえているお客さんの姿が目立ち、終わってみれば多くの冊子が少量を残すのみになりました。まだ在庫のあるフリーペーパーに関しましては、引き続きKIITOのフリーペーパーライブラリにて配布しておりますので、お近くにいらっしゃった方は是非お立ち寄りいただければと思います。

来年以降もKIITOさんではこのイベントを続けて行きたいですし、全国的にもこういったイベントはやって行きたいのでどんどんお声かけください!
そして、「無料ならそれはお客さん来るよね?」とフリーペーパーに関して懐疑的な目を向けられている方がもしいたならば、フリーペーパーの魅力が《そこもあるけど、そこじゃない》という事がわかっていただけると同時にもれなく「フリーペーパー面白いなぁ」という禁断の扉が開かれますので、次回の開催では是非お足を運んでいただけますと嬉しいです。
よろしくお願いします!

最後になりましたが、今回ご協力いただきましたフリーペーパーの発行者の皆様、本当にありがとうございました!!!


2018-04-17 | Posted in 松江健介, PEOPLENo Comments » 

 

Tokin個展「幻ではない」レポート



9月17日〜30日、個展「幻ではない」が無事に閉幕しました。
イベントも装飾も告知のやり方も…とこだわりまくり、壮絶にてんやわんやでしたが、初日から最終日まで最高の2週間でした。




展示したのは、「感情の取り扱い方」をテーマに描いた約70枚の絵。
いつもあるはずなのに意識せず、かといっていざ見つめてみると正体のわからない、自分の感情。摑みどころがなく流動的なそれとの付き合い方を、空間で作ってみたいと思いました。




会場のあちこちや絵に書かれた言葉と絵で作り上げたのは、心の中に入ったような空間。じっくり見て下さる方が多く、また、何度も来て下さる方もいらっしゃってありがたかったです。




そして、その感情の「取扱説明書」として作った画集の販売も。表紙にあしらったのは、会場の装飾に使ったものと同じもの。展示と本が、リボンでつながっているみたいでしょ。




さらに、フリーペーパー「ゾンビ道場」Vol.1〜20を全収録した総集編まで作りました。水彩の絵から離れたスピンオフのつもりだったのですが、サイズもページ数もむしろ主役級になっていました。やる気がみなぎっていますね!




こちらは、好きな絵と表紙を選んで冊子を作る手作りZINEコーナー。自分の絵が使われて、その人の作品になっていくのは新鮮でうれしかったな。





初日と最終日には、イベントを開催。
まず初日は、フリーペーパー・ナイスガイの菊池さん、キデンセンの浅草キッサさんをお招きしてのトークショーです。
「気の小ささから脱却したい、パリピ的な人が羨ましくて死にそう」という漠然とした思いから「うまくNOを言うにはどうしたら良いのか」「同じ話を二度聞いた時にどうやって話を遮れば良いのか」など、小さすぎる悩みを放り投げさせて頂きました。



考えた末の質問に、冒頭から「あまり考えても仕方がないんじゃないか」という返答を頂いて動揺。「不安を先読みしても限界がある」「楽しもうとする気持ちからパリピは始まる」など新しい視野を開拓して頂いた上に「そこまで他人の事を気にするTokinさんは優しい」という励ましの言葉まで頂き、その寛大さと余裕はまさに神仏のそれであり「パリピは仏」という事で決着がつきました。
最後に「一緒にクラブに行って下さい」と約束をしたので、きっと近いうちに実現する事でしょう。



また、会期中は、ツイッターで募集したメッセージを店頭の窓に描いていました。募集したのは「あなたの気持ちを形にすると何ですか?」というもの。私の気持ちだけでなく、その場にいない人の気持ちも会場に描いて積み上げたかったのです。





灯台、劇場、金魚など具体的なものはもちろん、心情を表したメッセージも多く頂き、想像力をフル回転させて挑みました!!






そして最終日は、朗読詩人・成宮アイコの朗読と、タダフジカのギター弾き語り、それからTokinの絵で作るライブショー!
感情を丁寧に拾い上げるような朗読と、その悲喜こもごもを描いた音楽で、集まったメッセージを一つの絵にしていきます。





描き上げたのは、寄せられた「気持ちの形」を着た子供達。いろんな思いがあれど、手を取って踊るように進んでいけたらいいよね。




ライブの開始の頃に差していた夕方の光も、終演の頃にはすっかり暗くなり、完成した絵が夜のコンクリートにくっきりと映されていました。                                    
こちらの絵は、今後もしばらく見る事が出来ます!OFPにお立ち寄りの際は、フリペ採集のついでにぜひ見てみて下さい



コンプレックスとか「私だけ気にしすぎだろうか」というモヤモヤをどう払拭するかずっと悩んできたけれど、モヤモヤしきってイベントにする、というのは思いがけない突破口でした。
払拭しない、という解決方法もあるのか!

トークショーで個人的な相談を盛り上げてくれた、キクチさん、浅草キッサさん、ライブでがっつり締めくくってくれた成宮アイコちゃん、タダフジカさん、そしてONLY FREE PAPERの松江さん、そして何より、お越し下さった皆々様!!本当にありがとうございました。






紛れもなく、幻ではない現実。でも、夢みたいに幸せな2週間、めっちゃくちゃに楽しかったです!




トキン Tokin
アーティスト、イラストレーター。「心理とおとぎ話」をテーマに、心理、社会、メンタルヘルスを題材とした淡い水彩画を描く。
学生時代より精神疾患を患いつつ、ごまかしごまかし学校へ行ったり辞めたりまた入ったり、入院したり就職したりと七転八倒。長期入院をきっかけに2012年、自身の精神障害(解離性障害、双極性障害)を漫画で描いたフリーペーパー「ゾンビ道場」を発行。そのコミカルな表現がメディア等で話題を呼ぶ。
朗読+音楽+絵で構成されるイベント「カウンター達の朗読会」では、ライブペインティングや会場装飾のパフォーマンスも。
痛みと生きる現実と、ファンタジーとが繋がった時、そこから見える世界は何色?
web site:http://tokin.info/
Twitter:http://twitter.com/Tokin0528





2017-10-12 | Posted in PEOPLE, トキンNo Comments » 

 

2017.03.04 ONLY FREE PAPER in KOBE レポート

当店ONLY FREE PAPER、3月4日に神戸に出張してきました。
毎年3月に開催されております『オープンKIITO』というイベントに出店するためで、今年で4年連続で呼んでいただいている大変お世話になっているイベントなのでした。


会場は今年もこちら!おなじみのKIITO 2Fライブラリスペースです。
ちなみにこちらライブラリスペースでは、常設スペースとして年中フリーペーパーが置いてあるので気になる方は是非行ってみてください!

イベント詳細はKIITOさんのページをご覧いただいた方が良い気がしますが、ざっくり申し上げますとKIITOを一日解放して、入居されている企業さんや周辺地域で面白い活動をされている方々やKIITOから発信する情報などを一堂に介し、楽しんでいただこうといういわば文化祭みたいなものです。
そんな中、東京から《フリーペーパー専門店》というなかなかに謎なお店を呼んでくださっているKIITOさんはやはり器が大きいのだと思いますが、さすがに一年目などは来ていただいているお客様も探り探りな感じが強く感じられました。




今年感じたことは、4年目の出展ということもあり、何か浸透してきた感がものすごく感じられました。
4年目とはいえ年1回の出展ですから本来浸透することなど無縁に思われがちですが、続けて何かをすると思わぬ現状が起こるものですね。
結果たくさんのお客様にお越しいただき、用意していたフリーペーパーも在庫がなくなってしまうものが続出し、サンプルとして一部保存しておいたものまでなくなってしまったものも多くありました。←これは管理側のミスですね・・・

毎年レギュラーで行わせていただいております企画は『今読んで欲しいフリーペーパー50誌』というものなのですが、過去3年に関して申し上げますと、正直すでにほとんど休刊してしまっている冊子および休刊している冊子もセレクトするというウルトラCも使っておりました。《読んで欲しい》はもちろん偽りのないものでしたがそれが先行してしまい《今》の部分を少しないがしろにしていました。(ごめんなさい。)
しかし、今回は正真正銘、現役の50誌を神戸に持っていくことができました!!
発行元の皆様に感謝感謝です!!!


なかなかお目にかかれないフリマガも最新号含む貴重なバックナンバーも…!!すぐになくなっていきました。。。


個人的大プッシュ、Hallelujah Traveler。前号から1年ぶりの復刊が待たれます!!


こちらも大好きゾーン。主に小田急線沿線駅や一部東武系の駅で配布されるComo le va?、徳島県のあおあお、額装フリーマガジンEncadreur。早々に配布終了…!!












【ONLY FREE PAPER in KOBE 2017 出展フリーペーパー】
ユーシュ
バッテラ
田んぼと油田
あおあお
honto!
イヤ、ホント気になります。
屋上とそら
BEYOND
paragy OPEN SQUARE PAPER
UNDIES ZINE
飛騨
ヘルスグラフィックマガジン
BLUE+GREEN JOURNAL
縄文ZINE
FREMAGA
SOLAR JOURNAL
AGRI JOURNAL
宗谷ひと図鑑
DEZZERT MAGAZINE
トコドコジルシ
三浦編集長
南部再生
BROTHER TIME
KEMO NOTE
KAMIBU
スーベニア
BLUE’S MAGAZINE
HIBI
Hallelujah Traveler
Como le va?
雲のうえ
ナイスガイ
kawagoe premium
RAW
Encadreur
TOKYO PAPER for Culture
GOTEKI
季刊猿人
ガジラ通信
岐阜マン
ミッドナイト
かくだのかお
scripta

あてら
月刊島民
別冊スペシャ
もとすみマニアックず。
ORB
いいね!農STYLE
(順不同)

発行のタイミングが合わない、在庫がない等、神戸に持って行きたくても持っていけなかったフリーペーパーもあるにはありましたが素晴らしいラインナップであったと思います。
(一部、イベントの後で休刊のお知らせをいただいた冊子も含まれております)

このイベント自体に過去何度かお越しいただいておりましたお客様から「今年ラインナップいつもより良くないですか?」なんてお声もいただきました!!
毎年、良いわ!笑 というツッコミもはいりましたが、前述の通り《現行のフリーペーパー》というものを強く意識してお声かけさせていただいた分知らない間に気合が入ったのかもしれません。

手前味噌ですが、あ〜やっぱりフリーペーパーって面白いな〜と再認識させられるイベントになりました。

イベントの後半では、さまざまな企業やお店・施設の広報誌などの制作に多方面で関わられているRe:Sの竹内さん、徳島県の広報誌あおあおの制作をされ、ショップ&ギャラリーuta no taneを運営されている森さんをお招きし、ローカルメディアやフリーペーパーについてトークセッションを開かせていただきました。


人!!


HI・TO!!


インタラクティブの欠片もない乱暴な告知を少ししただけにも関わらず、本当にありがたいです…涙
ちなみにこれ、視線の先には…


おおらかべ新聞!!(2013年より約1年半の間、吉本興業より発行されていた月刊のかべ新聞。Re:S制作。)


ローカルメディア、とりわけフリーペーパーつまり紙媒体について実際に制作に携わられている方々の言葉を色々伺うことができて、とても有意義な時間となりました。
フィジカルメディアを作ることの意義、制作にあたり大切にしていること、当然といえば当然ですがメディアの数だけ考え方があるし逆に共通する部分もある。
ここの場所にいた方の中からこの先フリーペーパーや何かメディアを立ち上げる方が現れるようなことがあれば嬉しいなあ。

あっという間の7時間でした。

来年も神戸に行けるといいなあ。


写真撮影:芦田博人、三好天都、堀江浩彰


松江健介松江健介 Kensuke Matsue
フリーペーパー専門店ONLY FREE PAPER店長、株式会社Beatface代表取締役。スタイリスト業を経て、石崎・芥川と共に2010年12月ONLY FREE PAPERを東京・渋谷に開業。移転、休業を経て現在は小金井市にて展開。全国各所の店舗や図書館、ゲストハウス等でのフリーペーパースペースのディレクションも行っている。好き—アダムジョーンズ・トマスピンチョン・メサブギー・ピザ・東京03・能・タンパベイレイズ・武田鉄平。嫌い—職質。






2017-03-24 | Posted in 松江健介, PEOPLE1 Comment » 

 

Tokin ブログ  検証・話しにくい事はなぜ話せないのか



はーい、こんにちわ!

前回の投稿からずいぶん空いたので「突然書くのも悪いのかな」とぼやいた所、松江さんから「空気は読まない方向で」と言われたので、張り切って書きます。

いきなり宣伝っぽくなりますが、今度、3月25日に「垣根を乗り越える」というワークショップを西荻窪で行います。アートと対話でコミュニケーションについて考えようというイベントで、今回は「話しにくい事を話題にして話すこと」をテーマにしています。
(詳細はこちら

そこで、ここ数日、私自身の「話しにくい事」を考えていました。みなさんが日々コツコツ積み上げている「話しにくい事」はなんですか?

私自身の話しにくい事、それは「だいたい24時間うつ状態であること」です!!
通常の挨拶として「やっほー、元気?」と言われると反射的に「あー、いや?まあ〜、うん。」と煮え切らない言葉を返しますが、正直、大体元気じゃないので最初から「やっほー、うつ状態?」と挨拶される方が合「うん」で済み合理的かもしれません。
でも、まさかそんな事は言えないですね…。なぜなんでしょうか…。

理由その1「人を心配させるから」
親しい人から「24時間うつ状態」なんて言われたら大体の人が「大丈夫?」って言いますよね。
しかし先日、超思い切って家族に「だってもう長らくずっとうつ状態なんだよ」と思いつめた顔で打ち明けたところ「だよね〜」と言われて衝撃を受けました。
少しは「大丈夫?」って労って欲しかったような気もしましたが、今後とも変わらぬご愛顧を賜りたくお願い申し上げたい所存です。

理由その2「嫌われたら嫌だから」
嫌われるのいやですね!私は嫌われるのかなりいやですね!でもよく考えると、うつ状態だからという理由で嫌われたら、今後親しくなっても早々に疎遠になるんじゃないでしょうか。

理由その3「会話が暗くなるから」
せっかくのtalk timeですから、暗いよりは楽しい方がbetterですよね。それに対する対策といたしましては、以前人から言われた「嘘ついてまで笑ってられても困る」という言葉を無心で唱える事で相手を信頼、本音で対峙するよう心がけていますが、もしそれで嫌われたら(以下略)

暗くなりそうな話題はやはり言いにくいし書きにくいようですね…。
なるべく素直に生きていくよう努めてはいますが、本音と建前を使い分ける汚れっちまった大人の私が、pureなteensのようにinnocentなheartで人と対峙するのは容易ではありません。大体いま、不要な英語を投入する事で文章を明るくしようと努めている私って、めちゃくちゃ真面目じゃないですか?

これまでも、ここのブログでは、相手と向き合う方法についてよく書いた気がします。そこでふと、2年前の記事を見たら
「「嫌われる自分」の枠組みをあらかじめ作って、その中に本音を閉じ込めるって、なんだかそんなの淋しすぎます。大事な人にそれをされたら、私は結構淋しいぞ」
と書いてあるのを見つけてしまいました。http://onlyfreepaper.com/tokin_20150414
そして私は何事もなかったかのようにウインドウを閉じ、今に至ります。

2年前の自分の言説を借りると
「変に思われるかもしんないけど、変に思わないかもしれない!
あなたが「変に思われるかもしんない」と感じている事、私はとっても魅力的に
感じるかもしれない!」との事です。大事な事は何度でも復習した方が良いですね。

最後に、いま最大に書きにくい事として「私もOnly Free Paperで絵のイベントをやりたい」と書き残し、今回の文章を締めさせていただこうと思います。ご清聴ありがとうございました。


プロフィールトキン Tokin
1983年生まれ。自分の精神疾患の病状をしゃべるフリーペーパー「ゾンビ道場」を発行しています。キーワードはメルヘンとメンヘル。イラスト、絵画、ライブペイントなど、アグレッシブに絵を描く病人です。
web site:http://tokin.info/
Twitter:http://twitter.com/Tokin0528



2017-03-20 | Posted in PEOPLE, トキンNo Comments » 

 

未知への挑戦状

20160807


渋谷パルコのONLY FREE PAPERがクローズとなりました。
自分が前回投稿したのがとても前なので、このタイミングで書くのはどうかと思いつつ、このタイミングだから書きたい事があり、書くことにしました。

私は渋谷という街に変な対抗心を燃やしています。
それはほとんど怨念であり、内訳は対人恐怖と、埼玉育ちであるコンプレックスが50/50であると推測されます。
そのため、一番最初に弊誌「ゾンビ道場」を作り、パルコに行く時の緊張と動揺は恐ろしいものでした。
パッションと消費意欲に溢れた渋谷の雑踏におののき、強迫的に部数を確認しつつ、それでも私は「着いたら安心、軽妙な雑談を展開する」という願望を捨てませんでした。人間やれば出来る、そう思っていたのです。

しかし、メンタルが不調である旨をペーパーに書いた自分が、突然世渡り上手になれる訳はなく、以後、私は今に至るまで

・OFPに行く為に外に行こうと決める(目標の設定)
・ゾンビ道場を渡す自分の姿をシミュレーションする(計画)
・周囲のお店を適当に歩く事で、緊張を緩和しようとする(試行錯誤)
・なかなか行かない(逃避)
・「よし、早く行こう」と心を決める(意思決定)
・OFPに着く。ゾンビ道場を渡す。(執り行い)
・軽妙な雑談をしようとして出来ない(挫折)
・緊張から解放の為、ドトール等に入るが動揺して注文が決められない(混乱)
・焼き菓子等を注文し安堵(安定)
・「外に出られた」という自負を得る(自己肯定)

という流れを数年に渡り繰り返す事になります。まるで巡礼のようです。

いつか「軽妙な雑談」が難なく行える時が来るのかと待っていますが、最近になってやっと、緊張しながら持って行く事も含めてペーパー作りなのかなと思うようになりました。
そのような発見が、醍醐味だとも思っています。

人と出会い、自分と同じような悩みを抱えた人について知ること、様々な想いの中でフリーペーパーを作っている方と出会うこと。
緊張と重みを持ちつつ赴いたイベントで「あまり緊張せず軽く作れるのがフリーペーパーの醍醐味ですよね」言われて愕然とすること…。
それもまた発見です。発見したいです、その軽妙さはぜひ、これから…。

渋谷店がなくなってしまったのは寂しいですが、次々と新しい試みを続けているOnly Free Paperから、今後どんなことが発見できるのか、とてもワクワクしています。


プロフィールトキン Tokin
1983年生まれ。自分の精神疾患の病状をしゃべるフリーペーパー「ゾンビ道場」を発行しています。キーワードはメルヘンとメンヘル。イラスト、絵画、ライブペイントなど、アグレッシブに絵を描く病人です。
web site:http://tokin.info/
Twitter:http://twitter.com/Tokin0528



2016-08-11 | Posted in PEOPLE, トキンNo Comments » 

 

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