OFP STAFF, インタビュー

インタビュー #1 「tentonto」(前編)

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様々なフリーペーパーが並ぶ中でも、パッと目に飛びこむ黄色い表紙。線画のイラストに惹かれて手に取ってみると、未知の情報がつまった紙面が、読者に思考のきっかけを与えてくれる。「真面目な題材をポップに伝える」そんな魅力はどうやって生まれるのか?

編集長のユミズタキスさん(タイトル画像:左)とデザイナーの原裕也さん(同:右)に、新人スタッフ橋爪がお話をうかがいました。

『ASD & ADHD Magazine TENTONTO』

発達障害への理解を広めることを目指して、2014年に創刊。
約4ヶ月おきに発行され、現在no.5まで配布中。
今回お話をうかがったお二人が立ち上げ人。
タイトル「テントント」は、「テント(発達障害当事者には、テントのような狭い場所を好む人が多いことから)」と「トント(スペイン語でバカを表す)」組み合わせたもので、「テントバカ」という意味。
http://tentonto.jp

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●「テントント」創刊のきっかけ

大学の同級生同士で共有していた思いが、フリーペーパー文化と結びついて「テントント」という形に。
そんな、創刊までのエピソードと、創刊時から今に通じる「伝えたいこと」

橋爪:お二人の出会いと、テントントとしての活動を始めたきっかけを教えてください。

ユミズ:大学が同じです。この活動を始めたきっかけとしては、私は小さい時からASDやADHDの診断を受けていた人間ではなかったので、まだ知らなかった状態から、自分のことをちょっとずつ分かってきた時に、やりたいこととして、自分も当事者だけど、支援活動のようなことをできたらいいなって思って。特に立ち上げの時にサポートしてくれたのが原くんです。

原:最初に彼が、アスペルガーを持っているってこと自体を聞いてもよく分からなくて、やりとりしていく中でだんだん分かってきたことが自分の中で驚きというか、今まで全く頭になかったところだった。それまでは、ちょっと変わってるなとかその程度にしか思ってなかったことが、彼との関わりによって発見があったので、それをシェアしたいなっていうのがあって。

橋爪:てっきり、活動をしてて、そこに賛同、みたいな感じで始まったのかなって思ってたんですけど、そういうんじゃないんですね。

ユミズ:本当に1号の時は、身内っていうか、そんな感じで始めましたね。

原:この表紙描いてくれた人も、別にいるんですけど、そいつも大学が一緒で、3人集まった時に何かしたいねって話になって、ちょうど、僕とタキス君が発達障害についていろいろ考えている時だったので、それをテーマにやっていけばいいんじゃないかっていう話になって。

ユミズ:じゃあ1番に渋谷のパルコ(のONLY FREE PAPER)に行ってみなよって(表紙の絵を描いてくれた)そいつから言われて、こういう、ZINEの文化があるんだなっていうのをその時知りました。

橋爪:じゃあ、テントントを創刊する前から、フリーペーパー自体に興味を持っていたわけではなくて、たまたまこの表紙の絵の方が教えてくれて。

原:僕は全然(フリーペーパー・ZINE文化について)知らなかったです。

ユミズ:僕も全然。表紙の絵の彼がかなり詳しくて、ピンと来たみたいな感じで、教えてくれたんですけど。

橋爪:表紙のイラストの方がすごいフリーペーパーに詳しいっていうのと、お二人のところにあった「発達障害をもっといろんな人に知ってもらいたい」っていうのが、たまたま結びついて始まった感じですか。

ユミズ:そうですね。

橋爪:フリーペーパー発行に至るまでの問題意識のようなものを教えてください。

ユミズ:僕自身が、発達障害を持っているから上手くいかなかったことっていうのに全然自覚がなくて、客観的に見られていなかった。特にちっちゃい時は、自分で環境を変える力がなかったので、自分の部屋を、すごく気の散る部屋にしちゃってたんですよ。自分の特性を客観的に見て、それに合わせた環境をつくっていくようなことが、もっと知られていれば、もうちょっと居心地の良い場所で過ごせたんじゃないか、ってことを考えて。それが実際に、「センサリーデザイン」という言葉で、イギリス発で実践されているのを知って、日本の方にも伝えたいなって思って始めたのがこのフリーペーパーです。

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●フリーペーパーであることの価値、「もの」の力

フリーペーパーという形でなかったら、「テントント」に出会わなかった人たち。その一人として気になる「なぜフリーペーパーなのか」

橋爪:「発達障害への理解を深める」っていう目的のために、フリーペーパーじゃなくても、例えばwebで発信とか、最近だったら、ユースト番組とか、YouTubeで動画配信とか、あると思うんですけど、わざわざフリーペーパーを選んだ理由って。

ユミズ:えー、ユースト配信、やりました。

橋爪:あ、やられてたんですね(笑)

ユミズ:まずは身近な所からということで、私と原で、ほぼ毎日やってたんですけど。

橋爪:毎日! すごいですね。すごい(笑)

ユミズ:毎日(笑)

それもやりつつ、例えばいきなり「自閉症」とかの専門用語でYouTubeを検索してくる人がどれくらいいるかってことを考えて。

橋爪:確かにあんまりいないかもしれないですね。

ユミズ:それでなんかできることないかなって時に、先ほどお伝えしたようなきっかけで、フリーペーパー・ZINEのことを知って、それでやるようになりました。

Webページもやってまして、あくまでフリーペーパーのサポート的な立ち位置のつもりだったんですけど、毎日やらないと続かないんだろうなーとか、思いながら、あげています。Webコンテンツを作ることが、(ASD・ADHDについての情報を)いろいろ調べるモチベーションにもなりますし。

原:あと、冊子とWebの違いって、やっぱり、出会い方の違いというか、Webから入るのと、街角でパッと目に入って見ていくのだと、導入が違うと思うんですね。

橋爪:そうですね。

原:やっぱり、こういった冊子でしか出会ってくれない人って、絶対いると思うんで、そういった意味でもこれからもどっちも続けていきたいって思ってます。

ユミズ:そうですね。やっぱり、webにも全部公開して読めるようにはしてるんですけど、それを見た上でやっぱり冊子が欲しいって言ってくれる方とても多いし、やっぱりこう「もの」の力っていうのかな、やっぱり、「冊子がある」っていうのって、価値のあることなんじゃないかなって思います。

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●0から1に 「まず知ってもらいたい」

先入観をなくすこと。取っていってもらうための工夫。
伝わってくるのは、「気づいて欲しい」という想い

橋爪:このフリーペーパーをパッと見た時に、表紙の情報量少ないなって思うんですけど、雑誌の表紙って、例えば、「特集:テントが大好きな人たち」コーナー名、みたいにいっぱい書いてあるのとか、よくあると思うんですけど、あえてこの少ない情報量にしてる理由ってあったりするんですか。

ユミズ:そうですね、デザイナーの意図からすると、「発達障害」っていう言葉の強さってあるじゃないですか。その強さが目を留めるきっかけになるってこともあると思うんですけど、その強さではねのけてしまう人もいるんじゃないかな、なんてことを思いまして、それを加味しています。紙の中で、情報量は少ないけど、おっ! とは思ってもらいたいみたいな感じですかね。

原:先入観を持って読んでほしくないというか、まずは読んでもらわないと分からないことなので。最初っからぎょっとさせるよりも、よくわかんないけどなんかありそうだなって感じのもので。別に、なんだ、出しといてあれですけど、すごい読んでほしいってわけじゃないんですよ。

橋爪:ああ〜

原:こういう感覚に合った人が来てくれればいいかなって思ってて。従来の医療系の雑誌でもないので。読む方も構えなくてもいいような感じにしたかったっていうのはありますね。

ユミズ:現状、問題があるよーぐらいまでは、取り上げられているんですけど、本当にどういう人達なのかまでは知られていない。100人に一人ですからそんなに多くないとはいえ、120人の学年だったら一人はいるわけで、そういう人がいるっていうところを、知らないよりは、0よりは興味を持っていただけたらなって。

冊子の中身は、結構濃いと思うんです。知らないから面白いっていう情報は結構入ってて。それは、当事者にも言えて。当事者も興味の幅が狭いから、少しは視野が広くなるきっかけになっているのかな、と思います。

原:紙面に取り上げている内容について、知ってほしいは知ってほしいですけど、どれくらい知るかっていうのは、読み手の理解力もありますし、こちらの伝え方の問題もあるので、だから、気づいてもらえれば、まずいいっていうのがあって、その中でどれくらい理解してるかっていうのは、僕としてはそんな気にしてないです。

ユミズ:原が言っているように、「頭に入れてほしい」っていうのが結構、核心をついていて。色々な風に捉えていただきたいですし、いろんな風に捉えていただきたいから、まず知ってもらう、っていうところに最終的になるのかな。

原:中身に関して言うと、結構いろんなアプローチをしていて。というのも、やっぱり、どれかのコーナーに、誰かが引っかかってくれるんじゃないか、っていうのがあって。全部が好きとは言えないかもしれないけど、このコーナーは好き、みたいなのが、一つぐらいはあればいいな、って思って。そう言った意味でも、バラバラ…じゃないけど。

ユミズ:実験的な。

原:製作メンバーそれぞれの性質を活かして作って、かつ、メンバーの性質が、読み手の誰かに共感してもらえたらいいな、と思ってます。あと、その時は読んでも分かんなかったけど、一回これを知ったことによって、日常生活で、何かしら気づきがあって、改めて読んでそういうことだったのかって思うようなのがあってもいいと思う。そのためにもとりあえずまずは知ってもらいたい。知ってもらうっていうか、頭の隅に入れてもらいたい。

ユミズ:取っていってもらわなければいけない。

原:そのための(とっかかりとして)、(デザインなどの)かっこよさはありますね。あと単純に言うとダサいのやだったんで。ダサいのばっかりだったんで、自分たちがつくるものは、ダサいのやだなって(笑)

橋爪:「ダサいのやだ」ってすごくいいと思います(笑)

原:ダサいものを駆逐したい。

橋爪:ダサいものを駆逐したい(笑)

さっき、「手に取ってもらうのがまず大事」っておっしゃっていたと思うんですけど、「テントント」っていうタイトルがまず、リズムの良さとしっかりした意味を兼ね備えていて、すごく良いタイトルだなって思いました。

このタイトルってすぐに思いついたんですか?

ユミズ:タイトル考えたのは私かな? 発達障害持ってる方って、得意不得意がすごくばらつくんですが、私もばらついている中で、言葉は結構得意なんです。だから、例えば「トント」って言葉があって〜、みたいな情報が、いっぱい頭に入っているので、そういう部分がもしかしたら命名に活かせているのかなって。

原 : 命名の流れを言うと、「テント」いいよねっていうのがあって、テントテントとか言ってて、テントテントはどう?みたいな話をしたりしてて。

ユミズ:「トント」はバトルスっていうバンドの曲名からとってて。その「トント」の PVでモチーフに なっているインディアンの、どこか野生的なイメージが、 ASDやADHD当事者に感じる動物的な部分と 重なる、っていうようなことを、一瞬で、パーって思いついて、「テントント」になりました。

原:個人的に面白いなって思ったのは、インディアンて、ネイティブアメリカンなんですけど、白人から見てバカって思うだけであって、本当は誇り高くて。お前らバカって言ってるけど、それは知らないからバカって思えるだけで、本当はそうじゃないっていうのが、結構言い当ててる感じもあるんですよ。

橋爪:なるほど。

原:タイトルを決めるのは、タキス君がいたから楽だった。

ユミズ:長所を活かしあいながらですね。

「テントント」にこめる想いを語る中に、くだけた一面が見える場面も。
そんな様子は、このフリーペーパーが持つ空気そのままのよう。
読者からのリアクション、創刊から現在までの変化など、インタビューは後編へ続きます。

text・interview 橋爪(ONLY FREE PAPER)
photo 奥山 (ONLY FREE PAPER)


2016-06-15 | Posted in OFP STAFF, インタビュー2 Comments » 

コメント2件

 『TENTONTO』誌面・テレビなど掲載情報 | TENTONTO web | 2016.08.28 23:03

[…] 2016年6月15日・18日 Only Free Paperさま・・・Webインタビュー記事、Only Free Paperさまサイト内にて前編・後編を掲載中。(TENTONTOweb内の詳細記事はこちら) […]

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