OFP STAFF, インタビュー

インタビュー #1 「tentonto」(後編)

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前半に触れられていた、「何も知識のない0の状態を1にする」ための様々なアプローチ。その裏にあるのは「このフリーペーパーが自分の夢」と言い切れるほどの想いでした。

『ASD & ADHD Magazine TENTONTO』

発達障害への理解を広めることを目指して、2014年に創刊。
約4ヶ月おきに発行され、現在no.5まで配布中。
今回お話をうかがったお二人が立ち上げ人。
タイトル「テントント」は、「テント(発達障害当事者には、テントのような狭い場所を好む人が多いことから)」と「トント(スペイン語でバカを表す)」組み合わせたもので、「テントバカ」という意味。
http://tentonto.jp

●当事者・非当事者、それぞれから見る「テントント」

非当事者同士の人間関係の中でも共感を覚えるこのフリーペーパー。
一方で、このフリーぺーパーが当事者に向けて発信しているもの。
両方の視点で読む「テントント」

橋爪:テントント自体は、「発達障害当事者とその周辺の人が、理解を広めよう」ってテーマでやられていると思うんですけど、当事者でもないし、周りにそういう人がいるわけじゃない私でも、すごく共感を持てる部分があるなって感じました。そういう読まれ方はもともと狙って行ったものなのか、予想外のことなのか。

原:それも狙ってましたね。

橋爪:やっぱり狙ってるんですね。

原:僕も、当事者じゃないんで。

ユミズ:まったく、違います、はい。

原:同じ部分と違う部分っていうのがあって、違うって言ってもやっぱり同じところも結構あるってことを、ちゃんと知ってほしい。知らないからもう知らないみたいな分け方じゃなくて、知って、ここまでは一緒だけどここからは違うなとか。でもそれって本来、他人と自分って、絶対そういうところってあるじゃないですか。その延長っていうと、ちょっと語弊あるんですけど、知らないでいると枠から外れちゃうんですけど、知ってるってことによって、なんだろう、もっと仲良くなったらいいな(笑)って思うんですよね。

あと、これはタキス君のいろんな苦労したっていう話を聞いて、思ったことなんですけど。世の中ってまだまだ、どこまでが怠惰で、どこからがその人のどうしても出来ないことなのかっていうのをちゃんと分かっていない人が多い。それが、その人がどうしても出来ないことに対して、できるようになれっていう圧力を生んでしまうと思うんですね。そういう状況を見て、どうかな、と思ってて。そういった意味でもいろんな人に知ってほしいですね。やっぱりその自分では当たり前って思ってることが、他の人にとっては当たり前じゃないってことも多くて、できることとできないことって人によって全然違うので、そのあたりも知ってほしいなっていうのがありましたね。

ユミズ:変わらない日常を大事にする人(当事者)が、変わらなきゃいけない圧力を感じながら、ちょっと重苦しくなることもあると思うんです。そういう人たちがテントントを読んで、少し楽に、自分と向き合い始めてもらえるようになれば、っていうのかな。

橋爪:私はテントントを、当事者でも当事者周辺でもない、外側からの読者っていう視点からしか読むことができないので、当事者・当事者周辺からは、どういうリアクションがあるのかを教えていただきたいです。

ユミズ:自分やご家族と照らし合わせて考えられる方が多いですね。視点自体が明るいところも、今までになかったからいいなって思ってくださる方がいます。この活動・フリーペーパーがあることですごく助かってますって言ってくださる方もいます。本当にありがたいことです。

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●テントントが発信するもの、「センサリーデザイン」

「センサリーデザインのある日本の未来を」
キーワードから読み解く、「テントント」の発信の姿勢

橋爪:このフリーペーパーを読むうえで、「テント」「センサリーデザイン」「感覚の違い」って3つがすごい重要なキーワードだなって思ったんですけど、このキーワードが設定されるまでにはどういう過程があったのかっていうのを教えて下さい。

ユミズ:冊子を読み返していて、「センサリーデザインのある日本の未来を作りたい」っていうのを、すごく言いたいこととして持ってるな、って改めて思いました。発達障害を持ってる人たちって、ストレスが溜まりやすい人たちだと思うんですよ。そういう人たちが少しでも楽に暮らせるように、生活を変えたり、生活のスタイルを変えたりするっていうようなアイディアが、センサリーデザイン、「個人の感覚から発した設計」ってことですよね。

引っ越したすぐの家って、そんなに心地よくなかったりするじゃないですか。自分用にカスタマイズすると思うんですけど。それの延長線上で、そういう考えだったり、行動だったりができる人がいたらいいなって。

発達障害の方全般に言えることですが、変化が苦手な人たちなので、環境を変えた方がいいのに、渋ってる人も多いっていうのかな。「変化を恐れない」っていうのを伝えたくて、それが冊子の見た目にも繋がってるかもしれないんですけどね。

「個人の感覚に端を発してる」「変化を恐れない」っていうのと、もう1個すごい大事なのは、「変化に対して真摯に向き合う」っていうのかな。とりあえずドカドカっと変えちゃって、結局居心地が悪くなったりとか、意見を聞いてあげなかったりすると元も子もなくなってしまうので。テントントの特色として、楽しい感じにしてるとはいえ、少し真面目というのかな。そのちょっと堅い部分は、変化ってゴリ押しでいくものでもないんだよっていうのを意識しています。

原:僕のデザイナーとしての観点から言うと、センサリーデザインという言葉が結構魅力的というか。本来デザインって今言われてるようなことよりもっと、パーソナルなものだと思ってて。「センサリー」っていうのって、発達障害を持ってる人だけじゃなくて、程度は全然違いますけど、どの人間に置いても、こういう触覚が嫌とか、黒板ひっかく音が嫌だとか。そういう小さい積み重ねがそれぞれ個人においてストレスだったり、嫌だったり、付いて回るものなので、そういった意味でも、デザインやってく上ですごいその「センサリー」っていうのは考えるべきものなんだなっていうのは思いますね。発達障害を持っている人って100人に1人ぐらいなんですけど、「デザインは、ちゃんとそっちを担わなきゃいけないんだな」っていう感じだから、そういうものを伝えたいっていうのはありましたね。

ユミズ:「テント」に関しては、「セーフヘイブン」って言葉で、すごい、海外で今言われてるんですけど。

橋爪:へー。

ユミズ:安全なヘイブン…。要するに避難場所ってことですかね。遮断されたような場所とか。気持ちを落ち着かせたり、考えを整理したりとか、するための場所。そういう風な一角を部屋に設けるっていうことを、デザインの設計事務所がやっているって認知も全然ないと思うから、知ってほしいです。

家に帰ってからのストレスを溜めないようなものがすごい求められてるんじゃないかなって。特に過集中なので、すごい無心になんかやったりするんですよ。だから、それで疲れちゃうよりは、落ち着ける場所があったらいいなっていう提案ですね。

原:逆に、どこも落ち着けないんですよ、世の中。

橋爪:ああ。

原:だからこそどこかに、自分のプライベート空間ぐらいには、落ち着けるところが必要だっていう。

ユミズ:最初の一歩として、それが大事なんじゃないかってことですね。

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●創刊から現在まで。メンバーの変化が意識の変化

現在5号までを発行。
作り手が変化していきながら、「ポイント」を探している。

橋爪:号を重ねるごとに、創刊号の時から意識の変化ってありますか?

ユミズ:メンバーの変化が意識の変化でもある感じですかね。メンバーが、テントントの内容に理解を深めていく中で、自分やご家族と重ね合わせて、例えば、「このせいで自分の妹と喧嘩したのか」とか。そういう気づきが入ってるところもあるのかな、とは思いますし、入れていきたいですね。それが入ってこそ、中身の濃い冊子になっていくかなと思っているので。頭でっかちな感じで、私一人の頭の中でやっていたようなことが、より複雑に多様になっていってるのかな、とは思います。

原:結構客観と主観の間を行き来してる感じがしますね。最初はただただ客観的で。

ユミズ:そうですね。

原:それが今は、より狙ってるというか。間を行き来してる。ポイントを探している感じがします。

ユミズ:より、個人に根ざしている感じはします。メンバー間での雰囲気作りができてるってことかな、とも思ってます。私たちは、日常、なかなか同じような感覚を共有できる人がいないので、その分メンバー間で話し込むことも多くて。仲が良く。だからこそできることもありますね。

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●「このフリーペーパーが、自分の夢」

「0から1にする」それが叶うメディアだからこそ「やると決めた」

橋爪:フリーペーパー発行を続ける上での資金のお話を、お答えできる範囲で教えていただいても大丈夫ですか。

ユミズ:メンバーの方には、協力していただいている分、金銭面で協力してもらうのはおかしいと思っているので、完全に発行人である私の能力で発行している冊子で、それにプラスとして、本当にいいと思ってくださった方にご協賛いただく、っていうことでやっています。そうですね、確かに課題だとは思うんですけど、個人的にはもう、やると決めたっていうか。自分の意思、夢なんですよ。それを叶えるっていうことに一番直結しているものなので、金銭面に関して、ネガティブなイメージは持ってないですね。

広告は今現在も募集してるんですけど、広告だよりになってもなーってところもあるから。どうなんでしょう。まあ、私がいれば続けていくわけですから。そういうところで、納得してるっていうか、頭悩ませてるって程ではないですかね。

橋爪:「このフリーペーパーが夢だ」って言いきれるのはすごいことですよね。

ユミズ:0から1にするってとっても労力がいるものなので。それが叶うメディアとしてやっていて、すごい力を持ってると思います。ご協力いただいている店舗さんが今二十何店舗ありまして、ご協力いただいてるってことの方が奇跡みたいに感じています。自分ができることはやっているけど、それを超えて、皆さんにありがたがってもらえるっていうのはすごい嬉しいし、ありがたいことです。

「テントント」の中身を通じて伝えたいこと、そして、その中身をどうやって発信していくか。インタビューを通して、その2つが少しだけ見えてきたような気がしました。
真剣な言葉、少しくだけた一面、そして最後にこのフリーペーパーにかける熱い想い。
そんなお二人が映し出されたかのようなフリーペーパー、「テントント」を、私はこれからも読者として楽しみ続けたいと思います。

text・interview 橋爪(ONLY FREE PAPER)
photo 奥山 (ONLY FREE PAPER)


2016-06-18 | Posted in OFP STAFF, インタビュー2 Comments » 

コメント2件

 『TENTONTO』誌面・テレビなど掲載情報 | TENTONTO web | 2016.08.28 23:03

[…] 2016年6月15日・18日 Only Free Paperさま・・・Webインタビュー記事、Only Free Paperさまサイト内にて前編・後編を掲載中。(TENTONTOweb内の詳細記事はこちら) […]

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