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インタビュー #2 「DEZZERT MAGAZINE」(後編)

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お待たせしました!スノーボードフリーマガジン「DEZZERT magazine」編集人・酒井隆光さん(下部写真右)、フォトグラファー・小野塚章さん(同左)へのインタビュー後編。
10年フリーの紙媒体を続けていることへの思いやフリーならではの悩みや葛藤など…さらに「DEZZERT magazine」深部に迫ります!


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●DEZZERT magazine裏のコンセプト

野村:毎号、ペインターやフォトグラファーなどのアーティストの作品が数ページ登場していますね。

酒井:僕が最初に章くんの写真を見て感じた、「ああ。このスノーボードの写真すごいかっこいいな!」っていう感覚を、みんなにも感じてほしくて。スノーボードを専門に撮ってるフォトグラファーがいるのかどうかすら世の中の人はあまり知らないと思うんですよ。ライダーやフォトグラファーたちが、夜中に国道で撮影したりとか、深い山に入って命懸けで撮影していることとか。そういう人たちの『価値』を感じてほしいなと思って。それはフォトグラファーもそうだし、グラフィックアーティストもそう。海外に比べると、日本人は積極的に写真も買わないし絵も買わないじゃないですか。なんかそういう、フォトグラファーやアーティストの価値を感じられるようなものにしたいなっていうのは、僕の中で裏のコンセプトとしてあるんです。なので、1号目から毎回、同年代のアーティストに声をかけさせてもらって…スケートボードやサーフィンが好きだったり、もちろんスノーボードをする人も多いので、僕らのフリーペーパーに共感してもらえるアーティストたちに7ページ分登場してもらってます。

●広告主の話

野村:広告主について聞かせてください。

酒井:出稿してくれるブランドと僕らの関係性は、普通に出版されている雑誌媒体とは少し違っていて、僕らがフリーマガジンで作って世の中の人にスノーボードをどのように感じてもらいたいか、またはそのブランドがスノーボードのカルチャーに対してどういうはたらきかけをしていきたいのか、その方向性が一致するブランドじゃないと広告が入ったときに絶対に違和感があると思うんです。なので、僕らは単純な広告セールスするようなスタンスではなくて、あくまで僕らの考え方に共感してくれるブランドにサポートしてもらっています。たぶん、このマガジンに広告を掲載してそのブランドの商品が売れるかっていうとそうでもないと思うんです。商品が何も載ってない広告だったりもしますし。その、売上的な費用対効果というところじゃなくて、純粋なスノーボーディングだけを表現してるマガジンであることとか、僕ら作り手の考えとかパッションを認めてくれて、それで出稿いただいてるようなものなので、そういう意味ではすごく感謝をしてます。

野村:カルチャーを一緒に育てていくという意識が共有されているんですね。


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●10年間での変化

野村:10年やってきて、作りたいものの軸はいちばん最初の頃からブレていないということでしたが、それ以外で何か変わったなということはありますか?

酒井:ちょっと章くんが太ったくらいですかね。

小野塚:あ、やっぱり?ちょっと…18キロくらい太ったんですよね。

野村:18キロ!(笑)

酒井:まああとは…みんな結婚したね。ファミリーができたっていうところですかね。

小野塚:やっぱそれより、僕が18キロ太ったってほうがでかい。

酒井:うん、それは衝撃だよね。(笑)

野村:でも、ファミリーができて、それまでの冒険心というか、危険なことができなくなるというのはありましたか?

小野塚:それは全く変わんないですね。感じたことないです。これから行く雪山とかゲリラ撮影の話とか、家で表紙の撮影とかもやってて常日頃から自分のやってることを見せてるので。
あとは、強いて言うなら機材ですかね。いろいろ試したいんです。スノーボードの撮影は常にライブで、場所によってはもう一回というのが出来ないんです。今度こういうロケーションで撮りたいからそのためにこっちの機材用意しとこうかなとか。で、仕事の撮影で休憩時間があると、先方さんに「ちょっとライダー借りていいっすか?」とか。ライダーは仲間なんで、「ちょこっとそこでやって」って、でバシャッと撮ったり。

野村:じゃ特にデザートマガジン用の撮影でなくても、もう常に一年中それが頭にあるという…。

小野塚:そうですね。雪山に立つと「これデザートで使えるかな」とか。例えば板のブランドの撮影だとまあだいたい喜ばれるのは板がちゃんと写るカットなんです。でもライダーは、それが自分の思い描くスタイルじゃなかったらもう一回やりたがるんですよ。そのときに「よしゃ」って思って、今度はデザート用のアングルを考えたりする。常に仕事の時は仕事のものがちゃんと終わってればデザートのことでアングルを考えてます。夏は都内の仕事が多いけど、冬はもうずっとそんなかんじです。

酒井:10年経って変わったのは、章くんが忙しくなったっていうことかも。カメラマンとして飯食っていけてないときだったけど、今は色んな仕事もらってちゃんと食えているっていうのがいちばん変わったことですかね。

小野塚:いつなくなるか分かんないですけど(笑)

酒井:基本的に章くんが撮ったスノーボードの写真でやってきているので、章くんがスノーボードの写真撮れなくなったら、まあこれも終わるってことなんですよね。

小野塚:糖尿病で歩けなくなるとか…。最近コーラ飲んだときとか足が痺れたりするんですよね。

野村:危ないじゃないですか(笑)

小野塚:痛い…

野村:それ痛風じゃ…。

酒井:マジで!?ヤバいよそれ(笑)

野村:酒井さん的には10年間で変化はありましたか?

酒井:そうですね…。あまり変わってないけど、10年前よりスノーボードがうまくなったかな。

小野塚:そうだね。

酒井:あとは、毎年どんどんスノーボードが好きになってますね。年々少しずつですが、山の奥に入っていく感じです。

小野塚:山好きになったね。

酒井:写真も、10年前好きだった写真と今好きな写真と、ちょっとずつ変わっては来てるんですけど、でも山奥の写真と、街のストリートレールの写真と、どっちもやっぱり、スノーボードなんですよね。だから、僕はどっちが好きとかは全然ないんですけど、自分自身、年々スノーボードのことが更に好きになっていってるという実感はありますね。


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●これからのデザートマガジン

野村:今後も続く限りはこのスタンスで?

酒井:そうですね。章くんが撮っていれば。スポンサーがなくなっても僕は作ろうと思っています。数はかなり少なくなると思いますが…。

野村:おお〜!これ…けっこうお金かかりますよね。

酒井:まあ…相当かかります(笑)たぶん、もし普通にこれを販売するとしたら、一冊2000円くらいはするかと。

野村:それでも全然買う人はいると思うんですけど、でもそこはフリーっていうのがやっぱりデザートのスタイルなんですよね?

酒井:そうですね。でも、これだけ章くんも稼働してるしどうにか利益を生む方法はないかと、この何年かずっと章くんとも模索してるんですけど。なかなかその答えが見つからないというか…。すごい大きなスポンサーがつくというのはひとつ可能性としてあると思うんですけど、でも、僕たちのこのスタンスでそのスポンサーを見つけていくのはすごく難しいことなので。利益を生むことについては悩みなんですけど、ただ、みんな個々で仕事をしてる中でこれを作っているので、生きていくことはできるんです。出来る範囲内でやってるかんじですね。あんまり背伸びすると、たぶん苦しくなるし。でももしお金もかけられるんだったら、もっとやりたいことはいっぱいあります。

野村:スノーボードっていう文化を、紙メディアだけじゃなくてたとえば動画メディアとかで展開して、デザートっていうメディアとしていろいろやるという可能性もありますか?

酒井:ちょうど、それをどうしていこうかちょっと悩んでるかんじですね。今色んなWEBやSNSがあるので、そこでやれることもあるんですけど、なかなかいま、僕ら自身がそこに注力できてないっていうか。あと、そもそものコンセプトが紙媒体でこうやって写真を見せるっていうのに対して、インターネットで僕らのデザートマガジンを表現するっていうのがちょっと矛盾しちゃってる部分もあると僕は感じてて。パソコン上のモニターで見る感覚じゃなくて、やっぱりこのめくる感覚、紙の質感とか肌感とか、こう…部屋に飾って見たりね。

小野塚:5年10年で紙が落ちてくるかんじとか、色が落ちてくるかんじとかね。

酒井:すごくコスト効率が悪いじゃないですか、印刷って。でもまあ…ここにあるフリーペーパーもみんなそうだと思うんですけど、作ってる人みんな「紙が好き」って言ってると思うんですよね。紙媒体の魅力というか。めくって戻る感覚、紙で見る面白さとか、そこは僕らも一緒です。で、たとえばマガジンには一切入ってない、撮影のバックボーンや裏話はたくさんあるので、そういう表現の場としてWEBを使うというのは全然僕はあると思うので、そういうところはやっていければいいかなというかんじはしてますけど、媒体としてはやっぱりこれがメインかなと。

野村:いやでも、これはこの大きさとか重さとか、絶対大事ですよね。ずっしりくる感じの。

酒井:ですね。このクオリティで、「これフリーって、こんなのありかよ!?」っていうところをやっぱり突き詰めたくて。年に一冊発行になってからページも増やしたんですけど、このボリュームでこの紙のクオリティでそれがフリーでもらえるっていうところは、やっぱり大事にしたいなと。これが『新しい価値基準』じゃないかと思ってます。

小野塚:これもって帰るのって、その気にならないと持って帰れないじゃない?

野村:そう!ほんとそうなんです!

酒井:この重さ。。。僕らのこの思いを持って帰る、『君にもそのパッションがないと持って帰れないよ。』っていう、そこも確認できますね、これ。

野村:かっこいいです。いいな〜、なんかもう、ほんとに安心したというか。すごく「フリーペーパー」の人たちだな〜と。

酒井:まあ…変態ですよね(笑)


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スノーボードが好きでそのカルチャーの本当の価値を伝えたいという思いが創刊から10年、絶えることなくお二人の中で燃え続けているのだなあと、お話を聞き終え最後に見せてくれた笑顔につくづくグッと来てしまいました。パッションとそれを外に伝える表現手段と、継続させていく力。フリーペーパー専門店スタッフとしてもとても共感でした。DEZZERT magazine次はいよいよ10周年号。楽しみで仕方ないです!



text・interview 野村(ONLY FREE PAPER)
photo 野村・松江(ONLY FREE PAPER)


2016-10-18 | Posted in OFP STAFF, インタビューNo Comments » 
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