OFP STAFF, インタビュー

インタビュー #6 「 BLUE+GREEN JOURNAL 」


 深い緑や生き物の息づかいを感じる印象的なイラストが全面に配されたタブロイド判の大きな表紙と、そこに印刷された「奥多摩町公式」という意外な文字。ヒガコプレイスからは電車で1時間半、東京の奥座敷とも言われるこれまでの奥多摩のイメージを覆すような大判のフリーペーパー『BLUE+GREEN JOURNAL』を作るお二人に会いに奥多摩へ行ってきました。
 編集と制作は株式会社ミゲルの宇都宮浩さん、曽田夕紀子さんご夫妻。都心から奥多摩町に移住したお二人に、ジャーナルのこと、奥多摩での暮らしのこと、移住のことなど、いろいろ伺いました!

『BLUE+GREEN JOURNAL』

印象的な写真やイラストを軸に、ガイドブックでは伝えられない奥多摩町の奥深き魅力を発信する、奥多摩町公式の無料タブロイド。2016年創刊。
https://ja-jp.facebook.com/bluegreenjournal/



●都心から奥多摩へ

野村:まずは、都会暮らしだったお二人が奥多摩に移住することになった経緯を教えてください。

曽田:もともと私は田舎暮らしがしたいと思っていたんです。彼は全然そんな気がなかったんですけど、奥多摩に遊びに行くようになって、ここだったら現実的に都心で仕事をしつつ暮らすというのができるなと。それでゆるく物件を探すようになって、探し始めて2年目くらいにこの家を見つけました。

宇都宮:僕は大都会が好きで、最初はあんまり乗り気じゃなかったんですけど、一緒に遊びに来ているうちにだんだんその気になってきて。とにかく川で普通に泳げることに感動してしまったんです。川遊びって子どもの頃からあんまりやったことがなかったので。あとは、二人ともダイビングの雑誌の編集部にずっといたりして海のカルチャーは何年も見てきたんですけど、山はまた雰囲気が全然違って静かで。そういう魅力もありましたね。

野村:現在はこちらのご自宅でお仕事をするスタイルですか?

宇都宮:家でももちろん仕事をするんですけど、お茶の水に事務所があって、週に2,3回はそちらに行きます。

奥多摩のご自宅に住む猫たち。奥は都心時代からの同居猫「モス」、手前が最近仲間入りしたという「さとる」。



●町のオフィシャル媒体でやりたいことをやる

野村:2015年に奥多摩に移住し1年経たないうちに『BLUE+GREEN JOURNAL』を創刊していますが、移住前から準備していたのですか?

曽田:そもそもこういう仕事をしているし奥多摩は魅力的なところだから、紙で何か媒体を作りたいねという話はしていたんです。で、奥多摩町は各家にスピーカーがついていて毎日町内放送が流れるんですけど、私がたまたま家にいたときにその町内放送で「町のためになる計画募集」というのが流れたんです。町のためになる企画に対して町が支援をするという<元気なまちづくり推進事業>というもので、それがたまたま「明日閉め切りです」っていう放送だったので、急いで調べて資料を作って提出して、その一週間後くらいにプレゼンに行きました。

宇都宮:会社として普段は雑誌や書籍の仕事をやっているんですけど、受注の仕事をとにかく忙しくやって経験も積んできて、誰にも束縛されないで自分たちが良いと思うような媒体を作りたい、紙で作りたい、という気持ちが二人とも高まっていたんです。その<元気なまちづくり推進事業>の話を聞いたのがそういうタイミングでしたね。

野村:町の事業ということですが、例えば媒体をフリーにするとか、内容に町の意向はどれくらい汲み入れていますか?

曽田:コンセプトとして、奥多摩の魅力をガイドブックではないかたちで発信しながら、最終的にはこれを見て移住者が増えたら良いねというのはあるのですが、具体的な内容についてはほとんど好きにやっています。無料配布というのも、多くの人に手に取ってもらえるということで、フリーペーパーとして発行したいという提案をこちらからしました。

宇都宮:役場で人を紹介してもらったり、最終段階で内容の確認はしてもらっていますが、ほとんど直しというのはないですね。


野村:地元の人の反応はどうですか?役場や町の主要なところにはだいたい置かれているとのことですが。

宇都宮:イラストが面白いとか、すごいいいね、という声は予想以上にもらっていますね。町のオフィシャルマガジンということで役場が駅やバス停に置いてくれたり、あとは観光案内所や飲食店などにも置かれています。そのルートは最初からできていて、それプラス僕らが知り合いに紹介してもらったアウトドアショップとかカフェとか、そういうところに置いているので、配布ルートはけっこう恵まれているんです。

曽田:回覧板でも回してくれていて、奥多摩の人はみんな知ってくれてはいます。

野村:回覧板!創刊から一年くらいでほぼ100%の認知率ということですね。

曽田:人数が少ないから。5000人くらいかな…。

宇都宮:あとは地元の反応だと、文字が読み辛いとかも言われたりはするんですけど、この媒体は受注の仕事ではなく完全に自分たちが中心で作っているので、僕らの中での正解みたいなものをかなり気に入ったかたちでアウトプットできているんです。例えば文字が読み辛いということについては、レイアウトや写真、イラストがいい感じであれば、時には文字の視認性を犠牲にしてもいいじゃん、と思ってます。大きな紙で写真を捲って、ああなんかよさそうね、みたいなかんじでも、それはタブロイドとして機能している。そもそも雑誌やタブロイドって、「見てて楽しい」とか「なんかすげえ!」とか、そういう感覚的な面白さがないとつまらないと思っているんですけど、いまの本屋さんに売っている雑誌からそういう面白さがどんどんなくなっていると僕らは感じていて、『BLUE+GREEN JOURNAL』は、全部が読みやすくとか写真がはっきり分かるように、とかじゃなくてできるだけ思い切ってやる場にしたいというのがあったんです。

曽田:フリーペーパーとかインディーズ系の雑誌は面白いものがあるじゃないですか。それはやっぱり、編集長だったりアートディレクターだったり、強い思いを持った人の世界で作ってるものがやっぱり面白いからで、雑誌ってそういうものだと思うし、自分たちもそういうものを作りたいなと思いますね。

野村:お二人の好きなフリーペーパーはありますか?

宇都宮:OFPで見たものだと『ヘルス・グラフィックマガジン』とか、あとはスノーボードの『DEZZERT magazine』。あれは既存の出版社でやろうとすると、文字入れろよとか情報入れなきゃとなってきちゃうと思うんですけど、あの人たちは「とにかくかっこいいビジュアル載せたいでしょ」っていう、ぶっ飛んだ感じがすごい面白いなと。作り手の傲慢さみたいなものを隠さないというか、そういうものを読者としても期待しているし、作るとしたらそういうものを作りたいですね。




●生き物との距離感が変わった奥多摩暮らし

野村:ここからは「移住」について教えてください。それまでの生活の場であった都心と奥多摩とでは環境がガラッと変ったと思いますが、どんな生活の変化がありましたか?

曽田:家が広くて手の入れがいがあるので、家のことをやる時間が増えましたね。畑をちょっとやったりとか味噌作ったりとか、日々の生活することをもっと楽しむということをやっていきたいなという気持ちになりましたね。

宇都宮:奥多摩の前は浅草に住んでいたんですけど、その頃はほぼ100%外食だったんです。今は7,8割自炊かな。僕はやんないんですけど…。

曽田:まあ、物理的にお店が少ないんです。

宇都宮:あとは、生き物に優しくなった。

曽田:虫を殺さなくなりましたね。蛾とかもすごいいっぱいいて、最初はいちいち殺してたんだけど、もうきりがないし、この環境ではこっちがアウェイな身なのに殺生するということに抵抗が出てきて、虫を一匹殺すのにも気持ちが変わったよね。

宇都宮:めちゃくちゃ変わった。例えば、いま蟻が家の中にもすごい来るんですけど、「アリの巣コロリ」とか置いて何万匹という蟻が死ぬのはオレたちの傲慢じゃないかって話になって、わが家の蟻問題は今ちょっとそこで止まってます。
あと車で走ってて鹿に遭遇したりとか、猿やイノシシが畑を荒らしたりとか、動物の気配を身近に感じるので、対生き物ということに関してはここではすごいアウェイ感がありますね。

曽田:アウェイだね。人間が。


野村:住んでいる人の雰囲気や距離感なども都心と違いますか?

曽田:浅草は、引っ越す前は「ご近所付き合いが面倒」と聞いていたんですが、実際のところは全然付き合いがなかったんです。こっちは大家さんが野菜をくれたり、一緒にバーベキューをしたり、あとは奥多摩の移住者の仲間がどんどん増えてきました。

宇都宮:まあ、人数が少ないから自然と知り合いになる、みたいなね。やっぱりこういう場所なんで、田舎暮らしがしたいとか、静かなところで子どもを育てたいとか明確な理由があって、ちょっとしたハードルを越えながら来た人たちばっかりなんです。なので話をしてると、自分のやりたいことはやる、みたいな気質をみんなそこはかとなく持っていて、食べ物や暮らしぶりとかも、自然に選択している感じが僕らにとっては心地良いし、学ぶところがありますね。

野村:移住のデメリットは感じていますか?

曽田:デメリットが、思ったほどないんです。前は浅草で徒歩30秒でコンビニに行けるようなところに住んでいて、今は車で15分行かないとお店がないようなところだけど、そういうのも慣れちゃえば全然不便じゃないんですよね。

宇都宮:逆に東京のど真ん中で暮らしているとそっちに慣れちゃうんですけど、いま週に2,3回青山に行ったりして、そうするとオシャレだな〜と。東京の良い部分、モダンな部分とかファッショナブルなところとかを敏感に感じるようになっていますね。あとは満員の通勤電車とか、当たり前の東京だと思ってたことにすごい違和感を覚えたりとか、東京のど真ん中に対する正しい認識が再入力されるみたいな。

野村:お二人は今後もずっと奥多摩で暮らしていきますか?

曽田:奥多摩は、すごい気に入ってます。でも何がなんでもここにずっと住むぞ、という気持ちでもなく、何か機会があってほかに良いところがあったらそこに住むこともあるかなとは思うんですけど。ずっと住んでもいいなと思うくらいには気に入ってます。

宇都宮:夫婦の関係性でいうと、奥多摩移住はいいんじゃないかなと。こういうところに住んでいると協力し合わないと生きてけないんですよね。例えばうちだと、電車で出かけると駅から一人じゃ帰れないんです。迎えに来てって言わないと。そういう連携というか気遣いというか、多少なりともそういうものが必要になっていくので、家庭円満になる人が多いんじゃないかな。

移住から2年ちょっとで、奥多摩は完全にお二人の暮らしはたらくフィールドとなっているようでした。仕事の上でも生活の上でも信頼関係を深め続けるお二人を見ていると、奥多摩に移住するのもいいなあ〜などと思えてきてしまいます。

●奥多摩をさらに高いところから見る

さて、ここからは車で案内していただき、ご自宅から10分ほどの白丸湖へ。奥多摩は視界に入るのが7割がた山と空。まさにBLUE+GREEN、本当に気持ち良いのです!そんな奥多摩の景観と『BLUE+GREEN JOURNAL』でも活躍しているドローンの相性が良いということで、ドローン撮影で上空からの景色を見せていただきました。

白丸湖にて、ドローン飛んでおります。あっという間に見えなくなるまで上って行ってしまいました。



ドローンから見るとこう。



さらにもっと上へ。白丸湖付近は7割どころか9割がた緑でした。



無事に帰還したドローン



上空から見ると本当に緑の深い奥多摩。都心から1~2時間で、こんなにも“雑踏”や“騒音”とほど遠い環境に身を置けることに改めて驚かされました。

●ミゲルオススメの奥多摩ごはん処TOP5

最後に、お二人に奥多摩のオススメごはん処TOP5を伺いました。

<第一位>お食事処 ちわき
いちばんオススメは山菜の天ぷらが美味しい「そば天盆」。見落とされがちだけれど、わざわざ行く価値あり。川沿いで風情のあるお店(曽田)

<第二位>丹三郎 (たんざぶろう)
古民家をそのまま利用している、そばの店。魂のこもったそばとそばがきが非常に美味しい(宇都宮)

<第三位>蕎麦太郎カフェ
町民はワンコイン(500円)で食べられる。ここもやっぱりそばがオススメ(曽田)
店もシンプルで木の温もりがあって良い(宇都宮)

<第四位>三河屋(土蔵食亭)
宿屋として古くからやっているところで、蔵を食堂にしている。茶そばがオススメ(宇都宮)

<第五位>手打蕎麦 ごろう
御岳の駅の近くだから青梅市なんだけど、上品でつゆがとても美味しい(曽田)
そばが完売で食べられないことがあるので早めに行くといい(宇都宮)

特に指定はしなかったのですが、TOP5全てそば!というそば好きなお二人とそば事情に恵まれた奥多摩でした。また奥多摩町にはそば処だけでなく、移住を支援する魅力的な制度もたくさんありますので、自然に囲まれて人生を歩んで行きたいという方はぜひ調べてみてください!


【BLUE+GREEN JOURNAL配布場所】

●奥多摩町内および青梅市内
自治会回覧板
JR青梅線各駅(青梅~奥多摩間)
西東京バス関連
奥多摩町役場
奥多摩ビジターセンター
きこりん
水と緑のふれあい館
都民の森
奥多摩観光案内所
山のふるさと村
ビアカフェバテレ
まちづくり委員会
株式会社森と市庭
はとのす荘
釜めしなかい
鳩の巣釜めし
蕎麦太郎カフェ
御岳登山鉄道
居酒屋 ハリーズ Harry’s
リバーベース Halau
やお九 甘味とごはん処
Yoshizo
GRAVITY
RAINBOWHOUSE奥多摩
家具屋 椿堂
荒澤屋
つちのこカフェ

●東京都内
アウトドアショップA&F
金柑画廊
飲食 fatty’s
眼鏡屋 スイス堂
飲食 na-cho
美容室AGU
美容室vicca
美容室Gigi
樹のはなクリニック
アーティストエージェンシーvisiontrack
GINZA SIX
東京観光情報センター
LIVING DESIGN CENTER 「OZONE」
ONLY FREE PAPER

●東京都外
小菅の湯
奈良文化財研究所
NPOホームズビー

 
text・interview 野村(ONLY FREE PAPER)
photo 野村・松江(ONLY FREE PAPER)・ミゲル<ドローン撮影>


2017-07-30 | Posted in OFP STAFF, インタビューNo Comments » 
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