松江健介, PEOPLE, レビュー

フリーペーパーレビュー #1「他人」 

日々続々と発行されているフリーペーパーの中から毎回1誌をピックアップし、紹介していくコラム「フリーペーパーレビュー」を開始したいと思います。
唐突にすいません。

私、松江の視点からああでもないこうでもないを繰り広げ、最終的に点数をつけるというコーナーです。

いきなり自分で自分の話の腰を折るようですが、普段から僕はこのようなことをよく言います。

「フリーペーパーって点数付けたり順位つけたりするものなの?」

これには色々な意見があると思いますし僕の中でも何人もの松江が言い合いをすることになるでしょう。
前のエントリーでもちょっと触れたのですが、これについては機会があればちゃんと触れようと思いますし、リクエストとかあればすぐやろうと思います。では、今回は何故「点数をつける」と言い切ってしまうのか。
それは、分かりやすいからです。読んでいただいた方により楽しんでいただけると思うからです。
少しでも多くの方にフリーペーパーに興味を持っていただき、業界を盛り上げて行ければと思いやらせてもらっていることです。

前置きが少し長くなってしまいましたが、さっそくやっていきたいと思います。

第一回目はこちら、

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「他人 #1」です。

昨年10月に名古屋で創刊されたこちらのフリーペーパー、シンプルなタイトルと「小便禁止」の看板が見据える先に腰を下ろす女性の存在感が圧倒的な表紙。
冊子のコンセプトはこうであります。

「玄関のドアを開けて一歩外に踏み出せば、名前も年齢も知らない人達とすれ違う。
でもその人は他人だから声なんかかけない、そしてかけられる事も滅多にない。
これはきっと、そこに”人が居る”という感覚ではなく、
自分から見て街と人が”ひとつの風景”になってしまっているからなんじゃないか。
でも、そんな風景に溶け込んだ人達にも、当たり前だけど、それぞれの歩んできた道があり人生があり、そして今がある。
“いつも素通りして、見逃していた風景の中に入り込む”ような。
そんな体験をしたら、いったいどんな心の変化を味わうことができるだろうか、いったいその体験は自分に何を届けてくれるだろうか。
テレビのヒューマンドキュメンタリーを見て感動すること、共感すること、勇気を貰うことは、誰しも経験があるかもしれない。
では、名もなきいつもすれ違っていただけの風景みたいな人、そんな人の人生を覗く事が出来たら、同じ様な感情が生まれるのでしょうか?
あるいは、有名な名前と才能があるからこそ、わたしたちは影響を受けたり勇気を貰ったりするのでしょうか?
その答えが、この「他人」の中にはあるような気がします。」

-他人ホームページ(http://tanin-paper.com/)より

90年代までは、どの世界にもカリスマと言われる人材が存在しその影響力は圧倒的でした。
しかし、00年を超えると次第にそういう存在が薄れ、半ばにもなるとソーシャルネットワークが台頭して生活にも大きな影響を与えていきました。この辺りは今更言及することでもありませんが、そのような社会の変化は当然の如く影響を受ける対象をも変えていきました。今多くの人は手の届かない誰かよりもちょっと手を伸ばせば届く存在や信頼をおける友人、自分と同じような境遇にいる見知らぬ人、そういった存在に影響を受けたり共感したりしているのではないでしょうか?しかしそれはあくまでもインターネットを介していることがほとんどであると思います。それで本当に真理や本質を知ることができるのでしょうか?確かにそんなとこまで迫らなくてもいいわってことはあるでしょう。しかし、多くの人が面と向かってコミュニケーションをとることの大きさをその経験から知っているはずです。

だからやっちゃいましたよこの人達。
全く知らない人に突撃取材、しかもかなり深いことまで聞き出しております。
第一号の編集を見る限りでは、インタビュアーの質問に対しおばあちゃん(表紙の方です)がマシンガントークを繰り広げるというどこの地域でも見かける光景になっているのですが、その辺りのさじ加減は次号以降も読んでみないとわかりませんね。もう少し掛け合いも読みたい気もします。

まあ、それは置いといて、とにかくコンセプトがシンプルでいて大胆。それでいて誰もが気になるインパクト。
素晴らしいと思います。

そして、このおばあちゃんですよ。強烈なキャラクターが誌面を読んでるだけでしっかり伝わってきます。スタンダールもびっくりな恋愛哲学を披露したかと思えば、ムルソー顔負けの異邦人っぷり。よくもまあ一回目からこんな強烈な人ひっぱってきたわと感心していまいますが、そこですぐに気づいたわけです。

「この人が特別なのではなくて人は誰しもドラマがあるんだ!」

まさにこの冊子のコンセプトですよ。やられましたね。
でもこれってやっぱりしっかり向き合って話すことによって出てくるものなんだと思う訳です。その場に流れる空気・景色・気温、しゃべる口調・相手を覗き込む目・変化する鼓動。そういうもの全ての結果でありそれを見事に400mm×270mm二つ折の誌面に凝縮させることに成功していると思います。

知らないけど身近な境遇の誰かにシンパシーを感じるということは、ソーシャルネットワークの功績によって気軽に手に入れられるものになったことの一つだと感じます。
僕は東京生まれで他の地域に長い間住んだことがないので地方の方々の繋がり方や、30年ほどしか生きていないのでそれ以前の人々の繋がり方は分かりかねますが、飲み物を飲むためにコップをとるように・小腹がすいたのでコンビニによるように・他人の個人的なインフォメーションに触れる機会が与えられることはまずなかったのではないかと思います。

そういったネット上の関わり方を通過してこの「他人」という冊子は生まれたのだと個人的には感じます。それもよりによってこんなアナログな形で。これはもうハイブリッドと呼んでもおかしくはないと僕は思います。
未来のハイブリッドは意外にもそんなシンプルなものなのかもしれません。

いずれにしろ今後が楽しみなフリーペーパーであります。

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4.6/5.0 点


松江健介松江健介 Kensuke Matsue
ONLY FREE PAPERオーナー。株式会社Beatfce代表取締役。フリーペーパーおよびリアルフリーの業態の可能性について日々頭を悩ます。



2014-01-08 | Posted in 松江健介, PEOPLE, レビューNo Comments » 
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