PEOPLE, トキン

熱を出して未開の地へ行こう

春ですね。
春ですが私は、インフルエンザになりました。
平素より寝込むことが人より多いわたくしですが、精神でなく身体をやられて寝
るというのは、若干の非日常感がありました。
体は悪いが頭は冴えている。むしろ体が悪いから頭がオーバーヒートしておかし
くなり、精神“も”やられた、と言えるかもしれません。

具合を悪くして最初の数日は本当に高熱を出していたので寝ていたのですが、熱
もいくらか引いてくると、動けないけど起きられないという半端な状態 になります
しかも、外に出てはいけないと言われたので外にも出られません。

大半は、眠るか、本を読むか、ツイッターを見るなどして過ごしていました。
でもそんなものには限界があります。現実はそんなものです。
その一方、限界がないものもあります。それは空想です。
人間の創造力は無限大…。私は空想の世界で遊ぶことを覚えました。
精神を病んでいるということを常々書いているので「いよいよか」と思われたか
も知れませんね。
大丈夫。「これから」ですよ…。

布団の中で暇つぶしにやっていた空想で、一番面白かったのは「もしも」遊びです。

私は畳の六畳間に布団を敷いて寝ているわけですが、それが、ゴージャスな天蓋
付ベッドであると仮定します。
そうするともう私は、豪邸の家の娘でしょ。そしたらパジャマは絹でしょ?それ
なら横に執事がいるでしょ?!?!
陶磁器のような青白くも美しい肌、バラ色の唇にうっすらとした笑みを浮かべ、
執事に言うのです。
「ねえ、じいや、私もあの小鳥たちと遊びたい…。少しでいいの、外に出ちゃだ
め?」
「お嬢様、ご無理はいけません…」
メイド達は、困ったような優しいような複雑な表情をして顔を見合わせるのでした。
「かわいそうなお嬢さま…。もう病は治らないというのに…」

もちろん声こそ出しませんが、目を閉じて、自分が寝ている所は杉並区の六畳間
ではなく、フランスの湖畔地方(というのがどこなのかあまり知りませ ん)の
お屋敷であると考えただけで、そこはうっとりと別世界。無料で別世界!!
「ゴボッボッボッボ」という様な無様な咳も、私が不治の病に冒された金髪の美
少女であると思えば、儚い美しさを秘めた記号になり得ますね。
「けほっけほ…」
「お嬢様、ご無理はなさらず…!!」」
そう、私は美少女…金髪の美少女…ローラ!!!(西城秀樹)

あるいは、日本の昔話に出てくる、土間に寝ている病弱なお母さん、というのも
良いですね。
これなら、ここが畳であることについても説明がつきますし、国籍も同じなので
少し親近感が湧きます。
「悪いね…こんな母さんなばっかりに…(げほげほ)」。
このシチュエーションなら、幼いながらに働きに行ってくれる長男と、リンゴの
ような頬をした妹が必要です。私は子育てをしたことがないので、さっ きより
少し上の創造力が必要になってくるでしょう

ひとしきり内側に向かうことに飽きたら、外もまた、良いものです。
外に向かってだって、人は創造力を働かせることが出来ます。実に便利。
我が家は道路沿いなので、いろんな音が聞こえます。
子供が自転車で駆け抜ける声、道路工事のおじさんの声、車の音…。
音しか聞こえない、それら一つ一つについてストーリーを勝手につけていきま
しょう。

「おい!お前あっち行くっつったろー?」
「遅っせえよ!ぎゃははは」
というような中学生男子の声。
私は中学生男子がしゃべっているであろうと考えますが、もしかしたら、中学生
男子のようなしゃべり方をする中学生女子かもしれません。中学生男子 のよう
なしゃべり方をしている犬かもしれません。中学生男子のしゃべり声を流してい
る街宣車かもしれません。
もし、そうだとしたら私は何も知らずに、犬や街宣車の音声を聞いて「中学生だ
なあ」と思っているわけで、とても間抜け。
はは、笑ってしまうよね…。

そう考えていると、何がなんだかわからなくなってきて、ぐるっと目が回り
「世の中、絶対確実なものなんか何もないんだな…」
と、ある種の悟りのようなものが開けてきました。
何かNext Visionとでも言うべきものを感知したのかと思い、布団の中で手を合
わせるような気持ちがしました。(合わせませんでした)
多分まだ熱が高かったんだと思います。

また、インフルエンザから大変な感染症にかかって死ぬ、という空想もしました。
よく、亡くなった人についていろんな人が思い出を語っていき、実は故人には重
大な秘密が…。という映画や小説がありますが、それをなぞって「私は どんな重
大な秘密を残そうかなあ」と考えました。
でも重大な秘密というより、死ぬ前に、パソコンのフォルダに入っている変な文
章を消さないといけないなと考えたら焦燥感に駆られたので、この空想 は結構
すぐにやめました。

20140331 (1)

そういった空想にふけっていたんですが、空想の種が尽きてきて顔を搔いたその
時、私は
「眉毛というのは敢えて触ってみると思っている以上にふわっとしている」
という事に気づき、しばらく眉毛を撫でていました。
しかし眉毛を触るだけで新鮮な驚きを得ている自分が気の毒になり、この時心か
ら、インフルエンザって大変だなあと感じました。
当たり前のことって、案外気づかないものですね…。

なんだかんだで、そんな私の生活も一週間ほどで終了。やっと元の生活へ戻って
来られた次第です。
先日何かの本で、精神病的な様相を呈してしまった人について
「あまりの苦痛に耐えかねて、彼は空想の世界の住人になってしまった」と記述
されていたのですが、もしかして、空想の世界の住人である方が時間も つぶせ
るし楽しくて良いのではないでしょうか?
んん~、これはホントにメルヘンに近づいたかも!

精神世界って奥が深いんですね。
このまま、家で空想に熱中する時間をもっと延ばして行ったら何か違う次元が開
けそうでしたが、残念ながら今回はここまで。
私はまだ次元開かなくていいんでちょっと外出ますね…。
インフルエンザ菌はまだ流行っているようですし、次はあなたの番かもしれませ
ん…。くれぐれも、感染にはお気を付けて…。


プロフィールトキン Tokin
1983年生まれ。自分の精神疾患の病状をしゃべるフリーペーパー「ゾンビ道場」を発行しています。キーワードはメルヘンとメンヘル。イラスト、絵画、ライブペイントなど、アグレッシブに絵を描く病人です。
web site:http://tokin.info/
Twitter:http://twitter.com/Tokin0528





2014-04-04 | Posted in PEOPLE, トキンNo Comments » 
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